経済・社会構造分析レポート
ドル基軸通貨体制の中で円高を解消していくには

ドル基軸通貨体制は変わらない。長い目でみた円高対策が必要

2011年12月13日

経済調査部 経済社会研究班 神田 慶司鈴木 準

サマリー

◆2011年8月にS&Pが米国債を格下げしたこともあり、世界の基軸通貨として利用されてきたドルの信認が揺らいでいるようにも見える。そこで、本稿ではドルの基軸通貨体制の持続可能性と日本経済に与えてきた影響について検討し、日本経済が長期にわたって苦しんできた円高・デフレをどのようにしたら解消できるのかについて為替制度の観点から提案したい。

◆世界で行われている莫大な経常・資本取引の多くをドルに依存している経済・金融構造の中で、ドルの信認が低下しても突然ドルを使うことをやめることは現実的でない。各国がドルの不使用を進めれば、為替取引のコストが急増してしまうからだ。他方、取引量の多いユーロは通貨の安定に問題を抱えていて解決の目処が立っていない。人民元は取引量が乏しく、資本取引も自由化されていないので現時点では受け皿にはなり得ない。ドル基軸通貨体制は、信認低下による趨勢的なドル安を伴いながらも続いていくと思われる。

◆米国は基軸通貨国として守るべき義務を十分に果たしていないため、趨勢的なドル安が見込まれる。それを前提にすれば、ドル基軸通貨体制が続くことは、他国に比べてフロー・ストックの両面でドル安に脆弱な構造を持っている日本にとって決して好ましいことではない。変動相場制が持つ過度な変動は直接的に日本経済を悪化させるだけでなく、輸出企業がドル安(円高)でもコスト競争力を維持しようと名目賃金の伸びを抑制するという間接的な効果をもたらしている。そうした企業行動は内需の低迷とデフレ圧力を引き起こし、さらなる円高に繋がるという悪循環をもたらしている。

◆日本が行き過ぎた円高を解消していくには、変動相場制の過度な変動を抑制するルールを各国間で形成する努力が必要ではないか。また、アジアや欧州などの経済発展に日本が積極的に関与し、同盟国である米国に対して間接的に基軸通貨国としての規律を促すことも有効だろう。さらに、日本の製造業が販売価格の下がらないようなモノ作りや下げずにすむ販売方法を目指すことも大きな意味を持つと思われる。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

おすすめ関連レポート

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

リサーチ

リサーチメールマガジン

大和総研研究員によるレポートやコラム、書籍・刊行物などの最新情報を適宜お届けします。

ダイワインターネットTV

2017年7月19日
「こども保険」をどのように考えるか

2017年7月11日
日本の住宅市場が抱える問題~貸家バブルを考える~

書籍・刊行物

熊谷亮丸、大和総研
トランプ政権で日本経済はこうなる(日経プレミアシリーズ)

「波乱はなし」と思われた米大統領選で、まさかのトランプ勝利!今後の米国・日本経済では何が起きるのか?トランプ勝利で不透明感の強まる米国の通商政策や金融規制、環境政策、日本経済の先行きについて、大和総研のエコノミストたちがやさしく、わかりやすく解説しています。2017年の経済情勢を見通すうえで必読の一冊です。

熊谷 亮丸 監修、大和総研 編著
この1冊でわかる 世界経済の新常識2017

「米国大統領選挙」「Brexit」「中国『バブル』崩壊」「FinTech」・・・私たちの日常生活には、「世界経済」に関するニュースがあふれています。本書では、トランプ大統領誕生による米国経済への影響をはじめ、世界経済はどんな仕組みで動いているのか、なぜ世界経済の動きが日本経済に影響を及ぼすのかなどについて、わかりやすく解説しています。