経済・社会構造分析レポート
財政を維持するには社会保障の抑制が必要

社会保障の抑制幅が増税幅を決める

2010年12月21日

鈴木 準
原田 泰

要約

◆社会保障以外の歳出について名目GDP比一定というルールを長期に適用したとしても、現役層の生産性向上並みに社会保障支出を拡大させれば、公債等残高GDP比は発散的に上昇する。このケースで公債等残高GDP比を消費税増税によって安定化させようとすると、10%台後半、さらには20%台前半への消費税率引上げが必要になる。

◆高齢者1人当たりの社会保障支出を実質額で一定にする歳出抑制を超長期に続ければ、増税を避けつつ公債等残高GDP比を安定化させ、さらに引下げることができる。ただし、公債等残高GDP比の上昇が止まるのは相当先のことになるため、実際には「節度ある財政」の実現とはいえず、歳出抑制と同時に一定の増税が必要と考えられる。また、1人当たり社会保障支出を超長期に一定とするのは極めて厳しく、そこまでの抑制ができなければ、その分の増税も上乗せされる。

◆名目成長率が実質成長率を下回るデフレの下では、長期の社会保障支出抑制を前提としても公債等残高GDP比が上昇し、財政は厳しい状況となっていく。本稿では、インフレによって財政問題を解決すべきと主張しているわけではなく、デフレによって名目成長率が低迷し続けることが財政に与える悪影響は大きいという点を強調したい。

◆長期に社会保障支出を抑制することを前提としたとしても、金利が成長率よりも高めに推移すれば、やはり財政は厳しい状況になる。金利上昇による利払いのための公債発行が財政赤字を拡大させ、それがさらなる金利上昇を招くという悪循環を、財政改革を着実に続けることによって回避する必要がある。なお、デフレであれば名目金利は名目成長率を上回ることになりやすい。この面からもデフレは望ましくない。

◆消費税増税で物価が上昇するとき、年金や医療など社会保障給付を物価スライドさせれば、税収が増える一方で歳出も増える。消費税増税分の物価スライドを実施したのでは、必要になる消費税率の引上げ幅がますます大きくなってしまう。社会保障の財源を確保し、また、全国民で社会保障制度を支えるために消費税増税が必要だとすれば、社会保障給付について消費税増税分の物価スライドを行わず、実質給付を引き下げる必要がある。

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