水銀に関する水俣条約

2013年11月22日

解説

「水銀に関する水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)は、「水銀条約」または「水俣条約」とも呼ばれ、水銀が人の健康及び環境に及ぼすリスクを低減するために、水銀の産出、使用、環境への排出、廃棄など、そのライフサイクル全般にわたって包括的な規制を定めたものである。2013年10月10日に熊本市において開催された外交会議において全会一致で採択され、EUを含む92か国が条約への署名を行った。メチル水銀を含んだ化学工場からの排水による公害であり、人に対する健康被害や自然環境の破壊などで大きな問題となった水俣病の経験を持つ日本が積極的に貢献し、条約の名称に「水俣」が付されている。

条約は、「水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的とする」とされ、35条5附属書で構成されている。条約の主な内容は以下のとおり。

・水銀の採掘と貿易
鉱山からの水銀採掘について、自国での条約発効後の新規の採掘は禁止し、既存の鉱山については自国での条約発効から最長15年間の採掘を許可する。水銀の貿易については、条約上認められた用途や環境上適正な暫定的保管等を目的とするもの以外を禁止する。

・製品への水銀使用
電池、温度計や血圧計、蛍光ランプなどの水銀含有製品(一部例外あり)について、2020年までに製造、輸出、輸入を原則禁止する(年限については、国によって必要な場合に延長可)。歯科用アマルガムについては、使用を段階的に削減する。

・製造工程における水銀使用
クロルアルカリ工業、アセトアルデヒド製造施設等を対象に、製造工程における水銀の使用を段階的に廃止する。また、塩化ビニルモノマー製造、ナトリウム又はカリウムのメチラート又はエチラート、ポリウレタンの製造での水銀の使用を削減する。

・水銀アマルガム法(※1)を使用する零細及び小規模の金の採掘
水銀及び水銀化合物の使用や環境への排出を削減、可能であれば廃絶する。自国の領域内の採掘が相当量と判断した締約国は、国の行動計画を策定し、実施する。国の行動計画には、国の目的及び削減目標、鉱石全体のアマルガム化などを廃絶するための措置、水銀の使用量の推計、水銀の排出及び放出並びに水銀への暴露を減少させることを促進する戦略、水銀や水銀化合物の貿易の管理、被害を受けやすい児童や妊婦などへの暴露を防止する戦略などを含む。

・環境への排出
大気への排出については、石炭火力発電所、非鉄金属の精錬等の工程、廃棄物の焼却設備などを対象に、利用可能な最良の技術や環境に関する規制措置等により排出の規制や削減を実施する。水・土壌への放出については、自国での条約発効から3年以内に関係する特定可能な発生源の分類を特定し、利用可能な最良の技術や環境に関する規制措置等により放出の規制や削減を実施する。

・水銀廃棄物
廃棄物からの水銀回収、廃棄物のリサイクル等は、条約上認められる用途又は環境上適正な処分に限定する。バーゼル条約の締約国については、本条約及びバーゼル条約に適合する環境上適正な処分を目的とする場合を除いて、水銀廃棄物の国境を越えた移動を禁止する。

・途上国への資金援助や技術支援
締約国は、その能力の範囲内で、自国の政策、優先度及び計画に従い、この条約の実施を意図する各国の活動に関する資金を提供することを約束する。また、開発途上締約国等の条約に基づく義務の履行を支援するためのひとつとして、締約国会議の指導の下に運営される地球環境基金の信託基金が資金を供与する。

・能力構築、技術支援、技術移転
締約国は、その能力の範囲内で、開発途上締約国等がこの条約に基づく義務を履行することを援助するため、適時のかつ適当な能力形成及び技術援助を提供するために協力する。

[参考資料]
下記の各省のWebページに関連する情報が掲載されている。
外務省「水銀に関する水俣条約
環境省「水銀に関する国際的な取組


(※1)水銀アマルガム法は、金を含む鉱石を砕いたものを水銀と混ぜ合わせて合金(アマルガム)を作り、それを加熱して水銀を蒸発させることで金のみを取り出す方法。安価で容易なため途上国などで行われているが、労働者は高濃度の水銀蒸気にさらされて健康被害が出る危険性が高く、また大気中への水銀排出が問題となる。

  1. (2013年11月22日掲載)

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