バーチャル・ウォーター(仮想水)

2012年10月31日

解説

食料を輸入している国について、仮にその輸入分の食料を国内で生産する場合に必要になると推定される水の量は、バーチャル・ウォーター(virtual water:仮想水)と呼ばれている。ロンドン大学のアンソニー・アラン氏が提唱した概念とされており、食料を輸出入することは、仮想的に水を輸出入していることに等しいと考えられている。食料の輸出入は、仮想水貿易(virtual water trade)とも呼ばれている。

環境省では仮想水計算機を公開しており(※1)、その計算によれば牛肉1㎏では20,600リットル、豚肉1㎏では5,900リットルのバーチャル・ウォーターを輸入していることになるという。日本のバーチャル・ウォーターは、国内の年間水使用量と同程度になるとの試算も紹介されている。もっとも、農業用水の使用量には、蒸発や浸透、再利用や洗浄等での利用など、さまざまな要素を考慮する必要があり、実際の使用量を正確に把握することは難しい。また、農産物生産の技術や工程などは、国や地域によって多様であり、一律に比較することは難しいと考えられるが、これらの試算は一定の目安となるであろう。

2011年度の日本の総合食料自給率は、熱供給量ベースで39%、生産額ベースで66%とされており(※2)、日本は先進各国の中でも比率が低いグループに位置する。また、これらの数値はいずれも緩やかな低下傾向にあり、国内で消費する食料を海外に依存する割合は次第に高まっている。一方、人口増加や地球温暖化などにより、世界的な水不足の深刻化が懸念されており、水や食料に関わる問題が拡大していく可能性もある。

総合食料自給率の推移

日本には、年間約6,400億m3の降水量があり、生産活動や日常生活に使用されているのはその1/8程度と推計されている(※3)。また、全国の水使用量は、水の循環利用拡大や農地の縮小などにより、1990年代前半頃から緩やかに減少が続いている。そのため、国内で水に関する問題を喫緊の課題と捉えることは難しいかもしれないが、国際化が進み海外生産や輸入量が拡大する中で、海外での水不足が深刻になれば、日本も無関係ではいられないであろう。

(※1)「virtual water」環境省
(※2)「食料需給表」農林水産省
(※3)「日本の水資源の現状・課題」国土交通省

(2012年10月31日掲載)

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