株式持ち合い

2011年7月22日

解説

金融機関や事業会社などが、それぞれの発行する株式を保有することを株式持ち合いと呼ぶ。A社とB社が相互に相手方の株式を保有することが多いが、A社がB社株を持ち、B社がC社株を持ち、C社がA社株を持つなど、複雑な形態の持ち合いもある。

日本の株式市場を特徴付ける株式持ち合いは、戦後間もなくから、1980年代後半のいわゆる土地バブル期まで、強化・維持されてきた。その歴史を簡単に振り返ってみると、株式持ち合いの形成は3つの期に区分できよう。

まず第一期は、戦後の取引所再開から昭和40年不況期までである。戦後の財閥解体等により一時的に個人の持株比率は上昇したが、敗戦により疲弊した個人が株式を保有し続けることは負担が大きく、株価の下落時などに売却された。その売却株式を吸収し、急速に株式持ち合いが進展したのである。また、株式の買い占めが盛んに行われたことから、その対抗策としても株式持ち合いによる安定株主作りが行われた。

第二期は、昭和40年不況期から石油危機までである。証券不況対策として株式買取機関によって買い取られた株式が放出され、これを金融機関や事業法人が取得することで株式持ち合いが一層進展した。また、資本自由化による外国資本の進出に対する企業防衛策としての安定株主作りが進み、株式持ち合いの強化につながった。

第三期は、石油危機からバブル期までである。活発化したエクイティ・ファイナンスの受け皿として銀行が株式を購入し、銀行の持株比率が大きく上昇した。これが企業にとっては安定株主比率の維持につながり、銀行にとっては含み益の増大につながった。

長きにわたって続いた株式持ち合いの強化・維持は、バブル崩壊とともに解消へと転じた。事業会社は含み益のある保有株の売却でバブル崩壊後の企業収益の落ち込みを補い、銀行は不良債権処理の損失を補うなどの目的で保有株式の削減を進めたのではないかと考えられる。また、2001年に銀行の株式保有を自己資本以内に制限する法律が制定され、銀行等保有株式取得機構や日銀による株式取得が行われたことなどもあり、株式持ち合いの解消が大きく進展した。

株式持ち合いは安定株主の形成につながり、長期的な視点での安定的な経営に寄与するとの考え方がある。しかし、相手方の株式を保有することは、株価下落により損失が発生することや、資本効率の低下などを招く可能性がある。また、コーポレート・ガバナンスに対する意識の高まりとともに、株式持ち合いは互いの経営に口を出さないという関係が懸念され、経営のチェック機能が働かなくなることや、他の株主の権利を阻害することにつながる可能性も指摘されてきた。そして、「株式の保有状況」の開示やIFRS(国際会計基準)の導入議論などもあり、株式持ち合いに対する株主や投資家の目はますます厳しくなってきている。

(2011年7月22日掲載)

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