ESGニュース
企業におけるポジティブ・アクションへの取り組みの動向

2013年1月18日

少子高齢化による労働力人口の減少が懸念され、企業における女性の活躍推進が求められている。女性の活躍推進には、過去の雇用慣行などから男女労働者間に事実上生じている格差の解消が必要とされ、その措置を「ポジティブ・アクション(女性の能力発揮促進のための企業の積極的取組)」と称している。そこで、厚生労働省「雇用均等基本調査」(※1)から、企業におけるポジティブ・アクションに対する取り組みの動向を検討してみた。

図表1が、ポジティブ・アクションの取り組み状況の推移を図示したものである。まず直近の状況をみると、平成23年度でポジティブ・アクションに「取り組んでいる」企業の割合は31.7%で、前年度に比べ3.7%ポイント上昇している。また、「今後、取り組むこととしている」企業の割合も15.1%で、前年度に比べ4.4%ポイント上昇した。一方、「今のところ取り組む予定はない」企業の比率は51.9%で、前年度に比べて8.4%ポイントの低下となった。前年度と比較すると、ポジティブ・アクションへの取り組みが拡大しているようである。具体的な取り組みとしては、「人事考課基準を明確に定める(性別により評価することがないように)」とした企業の割合が68.1%と最も高く、次いで「パート・アルバイトなどを対象とする教育訓練、正社員・正職員への登用等の実施」が56.2%、「職場環境・風土の改善(男女の役割分担意識に基づく慣行の見直し等)」が45.9%となっている。

次に、平成12年度からの状況をみると、ポジティブ・アクションに「取り組んでいる」企業の割合は平成23年度が最大となったが、平成18年度を除いて3割前後の水準から大きくは変わっていないようである。また、「今後、取り組むこととしている」企業を合わせると、その割合は平成22年度までは4割程度を推移してきたが、平成23年度は「今後、取り組むこととしている」企業の割合の上昇が寄与し、合計の割合は46.8%となった。

しかし、直近の平成23年度でも「今のところ取り組む予定はない」企業の割合は51.9%で、半数を超えている。ポジティブ・アクションに取り組まない理由としては、「既に十分に女性が能力発揮し、活躍しているため」とする企業の割合が36.4%と最も高く、次いで「女性の意識が伴わない」が15.8%、「ポジティブ・アクションの手法がわからない」が9.7%となっている。

図表1.ポジティブ・アクションの取り組み状況の推移
図表1.ポジティブ・アクションの取り組み状況の推移
(注1)平成12年度は、「既に、取り組んでいる」。平成15年度は、「平成11年度より取り組んでいる」及び「平成11年度以降から取り組んでいる」の計。
(注2)平成21年度以降、選択肢に追加。
(注3)平成15年度までは、「わからない」。平成21年度以降は、選択肢から削除。
(注4)平成22年度及び平成23年度の[ ]内の数値は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果
(出所)厚生労働省「雇用均等基本調査」

より詳細にポジティブ・アクションへの取り組み状況をみるために、産業別の取り組み状況を示したのが図表2である。ポジティブ・アクションに「取り組んでいる」企業と「今後、取り組むこととしている」企業の割合を図示した。ポジティブ・アクションに「取り組んでいる」企業の割合が最も高いのは、「金融業,保険業」の50.7%で、次いで「医療,福祉」が41.2%、「情報通信業」が40.8%、「卸売業,小売業」が40.5%であった。一方、最も割合が低いのは、「鉱業,採石業,砂利採取業」の16.1%で、次いで「運輸業,郵便業」が18.3%、「建設業」が22.8%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が23.0%であった。

ポジティブ・アクションに取り組んでいる企業の割合が高い産業について、平成23年度の国税庁「民間給与実態統計調査」で給与所得者に占める女性の比率をみると、全産業での割合が40.2%であったのに対し、「金融業,保険業」が45.0%、「医療,福祉」が75.7%、「情報通信業」が23.3%、「卸売業,小売業」が45.8%となっている。「情報通信業」を除いて全産業よりも女性比率が高く、特に「医療,福祉」の女性比率が非常に高いことが目立つ。一方、ポジティブ・アクションに取り組んでいる企業の割合が低い産業の女性比率は、「運輸業,郵便業」が16.2%、「建設業」が18.1%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が18.4%で、いずれも女性比率が非常に低い。ポジティブ・アクションへの取り組みと、女性比率にはある程度の正の関係がありそうである。

図表2.産業別のポジティブ・アクションへの取り組み状況(平成23年度)
図表2.産業別のポジティブ・アクションへの取り組み状況(平成23年度)
(注)岩手県、宮城県及び福島県は除く。
(出所)厚生労働省「雇用均等基本調査」

2010年に策定された「第3次男女共同参画基本計画」の「第4分野 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保」では、成果目標のひとつとしてポジティブ・アクション取組企業数の割合を現状(平成21年)の30.2%から、平成26年に40%超とすることが示されている。先にみたように、平成23年度のポジティブ・アクションに「取り組んでいる」企業の割合は31.7%であり、成果目標にはまだ隔たりがある。業務の特性など職種によって相違はあろうが、幅広い産業でポジティブ・アクションに取り組むことが望まれよう。また、ポジティブ・アクションに「今後、取り組むこととしている」企業が15.1%あり、これら企業が早急にポジティブ・アクションを実施することが期待される。


(※1)厚生労働省のWebページ「雇用均等基本調査」に、調査の概要や結果が掲載されている。

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