ESGニュース
循環型社会・自然共生社会は豊かさを維持しながら

-環境問題に関する世論調査から-

2012年8月24日

環境調査部 岡野 武志

内閣府が6月に実施した「環境問題に関する世論調査(※1)」の結果が公表された。全国の20歳以上の3,000人を対象として、循環型社会に関する意識と自然共生社会に関する意識について調査し、1,912人(回収率63.7%)から回答を得ている。

循環型社会に関する意識の調査では、キーワードとなる3R(リデュース・リユース・リサイクル)について、(1)(※2)「言葉の意味を知っている」とする回答が33.3%、(2)「意味は知らないが、言葉は聞いたことがある」とする回答が24.8%あり、これらを合計すると58.1%になる。2009年に実施された前回調査(※3)の結果((1):29.7%、(2):23.6%)と比較すると、3Rへの認知は進んでいるといえよう。また、回答者のごみ問題に関する意識は高く、「あなたは、日頃の暮らしの中で、ごみの問題は重要だと思いますか」という問いに対して、重要だと思うとする回答が98.4%を占めている (「重要だと思う」:81.6%、「どちらかといえば重要だと思う」:16.7%)。ごみを少なくするために日頃から行っている行動としては、「詰め替え製品を使う」(59.2%)、「レジ袋をもらわない(買い物袋を持参する)、簡易包装を店に求める」(59.1%)、「食べ残しをしない、買いすぎや作りすぎをしないなど、食品を捨てないようにする」(55.8%)などが挙げられている。回答者の86.8%は、日頃の暮らしの中でごみを少なくする配慮やリサイクルを実施しているという(「いつも実施している」:34.9%、「ある程度実施している」:51.9%)。

しかし、「大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会から脱却し、循環型社会を形成する施策を進めていくことについて、あなたはどのように思いますか」という問いに対しては、(3)「現在の生活水準(物質的な豊かさや便利さ)を落とさず、大量生産、大量消費は維持しながら、廃棄物の再使用(リユース)や再生利用(リサイクル)を積極的に進めるなど、できる部分から循環型社会に移行するべきである」とする回答が49.5%を占める。(4)「現在の生活水準(物質的な豊かさや便利さ)を落とすことであり、循環型社会への移行は受け入れられない」とする回答(3.1%)と合わせると、現在の生活水準を維持することを望む回答が、半数を超えることになる。現在の生活水準を維持することを望む回答は、20歳代から40歳代に比較的多くみられ、20歳代男性では72.4%に上っている。前回調査の結果((3):39.1%、(4):1.8%)と比較すると、現在の生活水準を維持することを望む回答が、今回大きく増加していることがわかる。

自然共生社会に関する意識の調査では、生物多様性という言葉について、(5)「言葉の意味を知っている」とする回答が19.4%、(6)「意味は知らないが、言葉は聞いたことがある」とする回答が36.3%となっている。前回調査の結果((5):12.8%、(6):23.6%)と比較すると、生物多様性についての認知も進んでいる。「あなたは、自然についてどの程度関心がありますか」という問いに対しても、関心があるとする回答が90.4%を占める(「非常に関心がある」:29.5%、「ある程度関心がある」:60.9%)。「あなたは、生物多様性に配慮したライフスタイルとして、これからどのようなことを行いたいと思いますか」という問いに対しては、「節電や適切な冷暖房温度の設定など地球温暖化対策に取り組む」(71.9%)、「旬のもの、地のものを選んで購入する」(57.7%)、「生きものを最後まで責任を持って育てる」(54.3%)などと回答した比率が高い。

しかし、ここでも「生物多様性の保全のため、地球上のさまざまな生物やそれらが生息できる環境を守る取組が進められていますが、あなたは、このことについてどのようにお考えでしょうか」という問いに対しては、(7)「人間の生活が制約されない程度に、多種多様な生物が生息できる環境の保全を進める」とする回答が52.8%を占めており、(8)「人間の生活の豊かさや便利さを確保するためには、多種多様な生物が生息できる環境が失われてもやむを得ない」とする回答も2.1%ある。人間生活の豊かさを維持することを望むこれらの回答については、性別や年齢別で大きなばらつきはみられないが、60歳代女性で最も高く63.9%を占める。前回の調査結果((7):50.4%、(8):2.7%)と比較すると、(8)の回答は減少しているものの、(7)の回答には増加がみられる。

この調査とは別に内閣府が行っている「社会意識に関する世論調査(※4)」(2012年)によれば、「あなたは、現在の社会において満足している点は何ですか」という問いに対しては、「良質な生活環境が整っている」(34.0%)という回答が最も多い。また、「あなたは、日本の国や国民について、誇りに思うことはどんなことですか」という問いでは、「美しい自然」(53.2%)の回答比率が最も高い。そして、いずれの回答も、2009年の調査結果(※5)(「良質な生活環境が整っている」:30.8%、「美しい自然」:50.9%)より比率が上昇している。「あなたは、現在の社会に全体として満足していますか」という問いに対しても、44.4%の回答者が満足している(「満足している」:5.0%、「やや満足している」:39.4%)と答えており、2009年の調査時点(「満足している」:4.4%、「やや満足している」:35.5%)より満足度は高まっている。

これらの調査結果を合わせてみると、3Rや生物多様性の認知は進んでいるものの、良質な生活環境や美しい自然がある現在の日本に満足していて、現在の生活水準や人間生活の豊かさを維持することを望む国民が増えているようにみえる。しかし、大量生産、大量消費、大量廃棄を続けながら、良質な生活環境や美しい自然を守ることはできるのだろうか。現在の意思決定や行動が、将来の環境や社会に大きな影響を与えることも忘れてはならないであろう。

世論調査にみられる意識の変化

(※1)「環境問題に関する世論調査(平成24年6月調査)」内閣府
(※2)回答の番号は、この文章のために符番したものであり、調査項目の番号とは関係がない。
(※3)「環境問題に関する世論調査(平成21年6月調査)」内閣府
(※4)「社会意識に関する世論調査(平成24年1月調査)」内閣府
(※5)「社会意識に関する世論調査(平成21年1月調査)」内閣府

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