ESGニュース
太陽光発電市場:2011年の動向と2012年の見通し

2012年3月9日

2011年の動向:欧州が主導、導入量急拡大

本年1月、欧州太陽光発電産業協会(EPIA)が2011年の世界の太陽光発電年間導入量を発表した(※1)。発表によれば、2011年の世界の年間導入量は前年比66%増の27.7GWへと急拡大し、過去最高を更新した。導入量が多かった国は(1)イタリア(9GW)、(2)ドイツ(7.5GW)、(3)中国(2GW)などである(図表)。欧州が導入量の75%を占め、引き続き最大の市場となった。

世界の年間導入量(27.7GW)は大方の予測を上回った。EPIAは昨年5月時点で年間導入量を13.3~21.2GWと予測し(図表)、ドイツ太陽光発電産業協会(BSW)は昨年11月時点で同24.3GWと予測していた(※2)。実際の導入量がこれらの予測を上回った理由は二点ある。

第一に、ドイツで大方の予測を上回って導入量が伸びた。ドイツは2010年に7.4GWを設置し、導入量シェアで世界の4割を占めたが、2011年はフィード・イン・タリフ(Feed-in Tariff: FIT)制度の買取価格の引き下げにより、導入量は減るとの見方が多かった。EPIAは昨年5月時点で年間導入量を3~5GWと予測(図表)、BSWは昨年11月時点で5GWと予測していた(※3)。実際には導入量は7.5GWと前年比微増となったが、これは太陽光発電のシステム価格が想定以上に下がり、2012年年初からの買取価格の引き下げの直前に、大規模な駆け込み需要が発生したためである。昨年12月、ドイツでは年間導入量の実に4割にあたる3GWが設置された(※4)

第二に、ドイツ以外の国で大方の予測以上に導入量が増えた。イタリア、ドイツ、中国、フランス、オーストラリア、英国、ベルギーで、導入量実績がEPIAの予測を上回った(図表)。2010年に既にGW(ギガワット)市場であったドイツとイタリアに加え、新たに中国、米国、フランス、日本で年間導入量が1GWを超えた(※5)。FIT制度改定に伴う駆け込み需要(イタリア、ドイツ、フランス、英国)や、補助金制度終了に伴う駆け込み需要(米国)、FIT制度の導入による需要増(中国)など、制度の変更による影響が大きい。


2012年の見通し:欧州は減速か、中国・日本・米国が頼みの綱

2011年に導入量が過去最高に達したとはいえ、2012年の太陽光発電関連市場の見通しは決して明るくない。第一に、2011年の導入量が27.7GWに達したと言っても、世界の太陽光発電システムの生産能力は2011年5月時点で既に40GWに達したとみられる(※6)。供給能力が需要を大幅に上回った状態であり、太陽光発電システム価格は下落が続いている。セル・モジュールメーカーでは業績悪化が相次いでおり、需給バランスの回復にはまだまだ調整が必要な状況である。

第二に、世界の導入量の約75%を占めた欧州で、導入支援政策を見直す動きが相次いでいる。イタリアにおける2011年の導入量の急増は、買取価格引き下げ前の駆け込み需要によるところが大きく(※7)、価格が既に引き下げられた今年は同様の需要を見込みにくい。ドイツは今年3月より太陽光発電の買取価格を20~26%引き下げ、2012~2013年の年間導入量を2.5~3.5GWに制限する見通しである(※8)。フランスでも新制度導入により年間導入量を0.5GWに制限する見通しだ。英国でも本年3月と7月にさらなる買取価格の引き下げを検討している(※9)。これまで世界の需要を支えてきた欧州だが、本年は需要が減少する可能性があろう。

頼みの綱は、中国、日本、米国における市場拡大である。中国は昨年FIT制度を導入し、ギガワット市場へと成長したが、中国国家エネルギー局はさらに昨年12月、第十二次五カ年計画の一環として太陽光発電の新導入目標(2015年に15GW)を発表した(※10)。目標達成のためには、2012年から2015年まで平均年間3GW以上の新規設置が必要になる。欧州需要低迷が見込まれるなか、世界最大の生産能力を抱える太陽光発電産業の振興策としても、中国が導入量を増やしていく可能性はあろう。

わが国では本年7月から、太陽光発電(産業部門と発電部門)にFIT制度が導入される(※11)。政府は過去に2020年に28GWまで太陽光発電の導入量を増やす目標を閣議決定しており、達成には2012年以降、平均年間2.6GW以上の新規設置を要する。制度設計の議論は当初の予定より遅れているものの、制度が開始されれば市場が拡大する可能性が高い。

米国では景気対策として導入された太陽光発電への補助金制度が2011年末に終了した。関連業界は同制度の期間延長を訴えており、制度延長がなされれば市場拡大の可能性もある。なお、オバマ大統領は引き続き、再生可能エネルギーへの政策支援を継続・拡大する意向を示しているが、共和党では政策支援継続に批判的な意見が多く(※12)、市場動向は大統領選挙の行方にも左右されそうだ。

図表 太陽光発電の年間導入量の実績・予測と増加率
図表 太陽光発電の年間導入量の実績・予測と増加率

(※1)EPIA (2012) Market Report 2011.
(※2)EPIA (2011) Global Market Outlook for Photovoltaics until 2015. およびBSW (2011) Global PV Market 2011.
(※3)EPIA (2011) , BSW (2011)
(※4)PV Tech (2012) “Germany sets new solar installation record of 7.5GW on late year surge.” 9 January.
(※5)GW(ギガワット)=1,000MW(メガワット)=100万kW(キロワット)である。
(※6)EPIA (2011)
(※7)EPIA (2012) なお、EPIAでは導入量を送電網に接続した時点でカウントしており、イタリアでは2010年に設置された3.5GWが、送電網に接続された2011年の導入量としてカウントされている。
(※8)ENDS Europe (2012) “GERMANY ANNOUNCES FURTHER SOLAR SUBSIDY CUTS.”, 23 February.
(※9)英国政府は2012年3月からの買取価格引き下げを既に決定しており、7月からのさらなる制度改定に向けてコンサルテーションを実施中である。Department of Energy and Climate Change (2012) Feed-in Tariffs Scheme Consultation on Comprehensive Review Phase 2A: Solar PV cost control.
(※10)新華社(2011)「『第12次5カ年計画』期間の非化石エネルギーの開発総量=4.8億トン標準石炭」(12月16日)
(※11)なお、住宅部門では2009年11月から余剰電力買取制度が導入されており、本年7月以降も継続される見通しである。
(※12)物江陽子(2012)「米国大統領選挙と環境・エネルギー政策

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