高等教育無償化で学生が流出する地域はどこか

高校卒業者の4~5%程度が新たに県外流出する県も

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サマリー

◆高等教育無償化法案が2019年2月に国会提出され、成立すれば2020年4月から施行される予定である。本レポートではこれをもとに①無償化の対象となる学生数と、②無償化によって新たに生じる都道府県間の進学移動者数を推計した。

◆無償化の対象となる学生数は、約81万人と見込まれる。これは2018年現在で専門学校・短期大学・私立大学・国立大学に在籍する学生の約4分の1に相当する。無償化措置の対象者数・金額は、現状の給付型奨学金や授業料減免等の措置と比べてかなり大きく、教育機会の拡大や教育費負担の軽減が期待できる。

◆一方で、負担軽減を契機として大学等が集中する大都市圏に学生が移動し、地方からの若年者の流出が加速する可能性が考えられる。本レポートの推計では、島根県、佐賀県、秋田県などの9県では高校卒業者の4%~5%が新たに県外に流出する見込みである。他方、東京都、京都府、愛知県などの11都府県では流出より流入が多く、無償化措置が都市部への若年者の集中を加速させる可能性がある。

◆高等教育無償化によって学生の流出が見込まれる地域においては地元での進学の奨励や、他地域で教育を受けた卒業生を地域に還流させる取り組みなどが求められるだろう。

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