マッチング拠出は確定拠出年金普及のエンジンとなるか?

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1月23日、平成21年度税制改正の要綱が閣議決定された。その中に、「金融・証券税制」の一項目として、「確定拠出年金制度の拡充」が盛られている。具体的には(1)企業型確定拠出年金について、事業主拠出額を限度とし、かつ、事業主拠出と合計して拠出限度額の範囲内で行う個人拠出(いわゆるマッチング拠出)が導入されることに伴い、その企業型年金加入者掛金の全額を所得控除(所得税法第75条および地方税法第34条に規定する「小規模企業共済掛金等控除」)の対象とする。(2)確定拠出年金の拠出限度額について、[1]企業型では、他の企業年金がない場合:月額46,000円を51,000円に、企業年金がある場合:月額23,000円を25,500円に、[2]個人型では、企業年金がない場合:月額18,000円を23,000円に引き上げる。確定拠出年金法が施行されて以来、厚生労働省をはじめとして、経済団体等から要望されていたマッチング拠出がようやく実現する道筋ができたわけである。


これらについては、確定拠出年金法、所得税法および地方税法等の税制改正関連法案に織り込まれており、今通常国会で審議され、成立する見通しである。


来年度税制改正による税収(国内税関係)の増減見込額は、平成21年度4,690億円、平年度6,850億円の減収となり、そのうち、確定拠出年金制度の拡充に伴う減収額は平成21年度50億円、平年度270億円となる。


企業型確定拠出年金は、平成13年10月施行以来順調に普及してきており、平成20年11月30日現在、規約数2,893件、実施事業主数11,166社、加入者数約3,066千人で、東京証券取引所一部上場企業の約26%が導入している。実施事業主のうち、従業員数100名未満が6割、300人未満で8割と中堅規模以下の企業が多数を占めている。また、掛金上限額が限度額に達している規約数の比率は全体の30%に満たない。今回の限度額引き上げによってこの比率は下がり、マッチング拠出の余地は広がることとなる。


マッチング拠出が導入されると、加入者掛金の所得控除により、所得税および住民税が減税される。その効果は、年収および家族構成等で異なるが、減税額の対掛金年額は、15%から30%と大きく、従業員および労働組合からのマッチング拠出の制度化および確定拠出年金の新規導入の声は今後高まることと思われる。


他方、平成24年3月に廃止される適格退職年金は平成20年3月末現在32,826件あり、そのうち、従業員数100名未満が7割、300人未満で9割を超えている。適格退職年金から企業年金への移行期限が残り3年と迫っている中、現状、移行がスムーズに行われているとは言い難い。


今回の税制改正を契機に、適格退職年金の企業年金(特に確定拠出年金)への移行が促進されれば、事業主および従業員にとって望ましいことである。


従業員も自身の給与等から掛金を拠出する以上、確定拠出年金の投資に関心も持つことになろう。確定拠出年金の最重要課題である「投資教育」は、マッチング拠出普及とともに従業員自らが積極的に取り組む「投資学習」に変われば、まさに、「貯蓄から投資」への大きな潮流になるのではないかと考えるのは余りに楽観的すぎるか?

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