本格的な普及への期待が高まる再生可能エネルギー

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  • コンサルティング第三部 主任コンサルタント 耒本 一茂
2012年7月に開始予定の再生可能エネルギーの固定価格買取制度による追い風を受け、再生可能エネルギー発電施設の導入計画の発表が相次いでいる。計画を発表しているのは地方自治体や民間企業が中心で、震災前に発表されていた東京電力や関西電力などの一般電気事業とは異なる。
計画発表の急増については、ソフトバンクの孫正義社長が2011年5月に発表した休耕地型のメガソーラー計画や「自然エネルギー協議会(同年7月設立)」の影響が大きかった。提案の中には休耕田20万haと耕作放棄地34万haをメガソーラー発電施設に活用する「電田プロジェクト」が盛り込まれており、大型投資を必要とする事業規模などが話題になった。その後、長期的に固定されると思われていた再生可能エネルギーの買取価格が3年毎に見直しになるとの発表があり、活動が一時的に減速するのではという見方もあったが、パネルの価格が予想以上の勢いで低価格化していることを背景に期待は再び高まっている。
自然エネルギー協議会に参画する自治体は2011年11月21日時点で35都道府県、京セラ、シャープなどを含む準会員は180社に拡大した。地方自治体は再生可能エネルギーの導入に適した候補地を選定し、補助金や税制優遇などを呼び水に、民間企業からの企画の募集を開始した。対象もメガソーラーに限定されず、風力や小水力、地熱、バイオマスなどに範囲が広がりつつある。
農林水産省もこれを後押しするような政策を打ち出した。2011年12月24日召集の通常国会に提出した「農山漁村における再生可能エネルギー発電促進法案(仮称)」では、点在する約40万ヘクタール(日本全体の農地の約9%)の耕作放棄地を集約し、再生可能エネルギーの発電施設に活用することで農村振興や荒廃農地の縮小を目指すことを示した。休耕地の活用は県や市町村などの自治体主導で進める必要があり、今後の活動の中核を担うことになると考えられる。
中央官庁の施策を受けて、再生可能エネルギーは地方自治体のまちづくりに融合し始めている。例えば、2011年11月に神奈川県は「ソーラープロジェクト推進本部」を「かながわスマートエネルギー構想推進本部」に改め「かながわスマートエネルギー構想」を新たな目標に掲げた。今後は、単なる売電事業ではなく、災害に強いまちづくりやエコタウン、エコシティ、スマートビル、スマートシティなどの地域振興策と融合していくケースが増えていくと考えられる。
2012年は日本の再生可能エネルギー元年と言えるほど、重要な一年になると考えられる。官民が一体となって、再生可能エネルギーによる発電事業の拡大を進めていくことが急務である。事業拡大を推進する上で重要なポイントは、以下に示すように、採算性を確保するためのビジネスモデル構築や、有効なファイナンス手法、成果を可視化する評価指標の確立などにある。発電に関わる事業会社や効率的にプロジェクトを進めるためにコンサルタントの役割も重要となろう。
〈自治体が再生可能エネルギー普及プロジェクトを考える上で重要な3つのポイント〉
【ビジネスモデル構築】
固定価格買取制度については3年後の価格見直しが予想されるため、これを想定した事業採算性を検討する必要がある。各電源ごとに買取価格が固定されるため、コストを抑えるための工夫や助成制度の活用などで効率性を高めることが重要になる。
【ファイナンス手法】
将来的に電力料金の回収が見込めるため、プロジェクトファイナンスによる資金調達にも向いている。民間資金を活用すれば、財政に余裕のない地方自治体でも電力供給システムの構築が可能となる。
【評価指標】二酸化炭素の排出量の削減以外にも再生可能エネルギー普及の成果を見る上で「再生可能エネルギー自給率」が重要な指標となることが予想される。同指標を基準にすることで、県レベルで再生可能エネルギーをどれだけ普及させているかが明確になる。

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