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外資が牽引して拡大するベトナム小売市場

2014年05月29日

アジア事業開発グループ コンサルタント 柄澤 悠

今年1月にホーチミン郊外Tan Phu区にオープンしたイオンモールが好調だ。オープン初日の来店者数は15万人と入場規制が敷かれたほどで、4ヵ月が経過した現在も週末には1日6~7万人が来店する。商業施設面積は約5万㎡。地上4階建て(地下1階)のフロアには、総合スーパーのイオンと約120の専門店が入居している。イオンはベトナム初のワンストップショッピング店舗となっており、食品から衣類、化粧品、玩具、家電製品が売られている。さらにモール内には、子ども向けのプレイエリアや娯楽施設、日本食をはじめとした飲食スペースも充実していることもあり、家族連れで1日過ごせることも魅力のようだ。駐車場は四輪車500台、二輪車4,000台を収容可能で、無料送迎バスのサービスもある。


イオンのようなスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのモダントレードの店舗は、働く若者世代を中心に人気を集めている。街中のウェットマーケットやパパママショップと比較して、店舗内が清潔で品質面での信頼が高いことや、値段交渉も不要であること、宅配サービスの提供などが人気の要因だ。2013年末時点で、ベトナム国内にはハイパーマーケットやスーパーマーケットが450店舗超、コンビニエンスストアは500店舗超に達している。モダントレードの店舗は、積極的に出店する外資企業を中心に増加している。


ベトナムでは2007年のWTO加盟時のコミットメントにより、2009年に外資に小売業が開放された。ただし、小売市場の約8割を占めるトラディショナルトレードの小規模小売業者を保護するため、外資の出店や販売品目等に対する実質的な規制が残っていた。


外資企業は、ENT(Economic Needs Test)と呼ばれる審査を経て、2店舗目以降の出店が許可される。これまでは、審査の判断基準が不明確であり、手続きの透明性も低いことが、外資の参入を妨げていた。しかし、日本ベトナム流通・物流政策対話(※1)や日越共同イニシアティブ(※2)の協議を経て、こうした参入障壁は改善の方向に向かっている。


ENTの審査基準は2013年6月に若干緩和された。まず、「出店予定地域における小売店舗数や市場の安定性、人口密度、市場規模に考慮すること」という規定において、「出店地域」が省や直轄都市レベルから区レベルに縮小された。また、「省や中央直轄市が商業マスタープランを作成しており、インフラ整備が完了している地域に販売面積500㎡未満で出店する場合、ENTは不要となる」という条件が新設された。さらに、省・市の人民委員会や計画投資局、商工局などから構成される「ENT評議会」が審査を行い、承認後、商工省の承認を得ることになった。この結果、販売面積の比較的小さいコンビニエンスストアは出店がしやすくなり、申請の窓口が明確になったことで手続きの時間短縮に繋がった。一方で、基準の詳細や手続きが未だ不明瞭であることや、商業マスタープランが非公開である等、一層の改善が期待される点も多い。


販売品目の外資規制も緩和が進んでいる。従来の規制対象である「米やたばこ、砂糖、医薬品、出版物など9品目」から米が対象外となり、砂糖や出版物を対象外とする検討も予定されている。


外国からの要望が受け入れられるのは、政府間交渉などを通じたベトナム政府への働きかけに加え、外資企業によるベトナム経済や産業への貢献が評価されたものと考えられる。2013年のベトナムの小売市場規模は約762億ドル、前年比で+18%拡大しており、今後も成長が見込まれている。イオンは2014年中にも南部ビンズン省に2号店、2015年にはハノイに3号店をオープンする予定で、2020年までに20店舗まで拡大する計画がある。ファミリーマートは2013年5月末に地場企業との提携を解消した後に再出発し、同年7月の直営店の再オープンから2014年4月末時点で既に36店舗を出店、2014年末までに70店舗を展開する計画である。外資企業の積極的な進出や事業展開は、ベトナムの小売り産業における、さらなる市場拡大や規制緩和の進展の鍵となろう。

図表:ベトナムの小売市場規模推移

(※1)経済産業省とベトナム商工省との間で、毎年、流通分野における両国の更なる発展と関係強化を目的として対話が開催されている
(※2)ベトナムの投資環境を改善し、外国投資を拡大することを通じてベトナムの産業競争力を高めることを目的として、2003年4月に日越両国首脳の合意によって設置された枠組み

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