中国経済を見る戦略キーワード(2)
—成長は保八から破八へ、そして高齢化へ3つの懸念—
2012年08月03日
2012年上半期の中国全土の成長率は年率で7.8%と久々に8%を割った(破八)。中国では従来、雇用への影響から8%以上の成長を維持する(保八)ことが至上命題のように考えられていただけに、にわかに中国経済の減速を懸念する声が内外で高まっている。ただ、地域別の成長率には大きなばらつきがあり、7月中旬までに発表された20の省・直轄市をみる限り、基本的に西高東低(西快東慢)である。中西部地域は大半が10%を超える一方、東部は10%以下が多く、ちょうど10%が東部と西部を分けるラインとなっており(東西部分界線、7月23日付第一財経他)、天津(14.1%)と福建(11.4%)のみがこの境界線を超えている。20の省・直轄市の中では、貴州の14.5%がもっとも高く、北京の7.2%が最も低い成長率だ。
3つの養老之憂
急速に進む高齢化に対する懸念(養老之憂)がもはや無視できなくなっている(不容忽視)との議論が、専門家やメディアの間で盛んになっている。第一は、高齢化社会に対応する産業が未発達であること(産業之慮)、たとえば2010年末、養老施設のベッド数は老齢人口総数の1.59%にすぎず、先進国の5-7%はおろか、一部発展途上国の2-3%にも満たない。養老施設は全国に約38,000しかなく、専門的人材が少なく経営効率も著しく悪い。第二は、高齢者の生活環境が困難を極めていること(生存之窘)、2010年末、要介護高齢者は3,300万人、うち1,080万人は完全介護が必要、2015年には、これが各々4,000万人、1,200万人以上に増えると言われている。なかでも、一人暮らしの要介護老人(空巣老人)が急速に増えている(以上7月27日付経済参考報等)。第三は、年金財政の資金難(資金之困)だ。
晒三公は触目惊心
6月、審計署は2011年審計工作報告(会計検査報告)を発表、多くの行政経費の不正使用、浪費の実態を指摘した。しかし、一般国民やメディアの反応は総じて冷ややかだ。米国をベースとする中国語サイト自由亜洲電台(6月29日付)は特に辛辣で、指摘されている例だけでも一般庶民を驚かせるものだが(触目惊心)、もちろん誰もがこれらは氷山の一角(冰山一角)にすぎないと考えており、現在すでに問題が手の施しようのない深刻なところにきている(病入膏肓)とまで指摘している。
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