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中国の義務教育段階における学校選択現象について

2012年06月29日

範 健美

最近、筆者は悩んでいる。あと1年ぐらいで、うちの子が幼稚園に入ることになるからである。家の近くに幼稚園がないから悩んでいるわけではない。悩んでいるのは、戸籍の所在する学区に評判のいい学校、特に中学校がないことである。「中学校のことなら、今考えるのは時期尚早ではないか」と読者はいうかもしれない。

9年間の義務教育が中国で法律の形で固まったのは1986年のことで、今に至って既に26年も経った。子供を基本的に戸籍地の所属する学区で入学試験無しで小中学校に入学させることが要求されている。これは各子供に義務教育を受ける平等な権利を与え、小学生の負担を軽減し、小学校から中学校への進学圧力を減らすことがそもそもの目的だった。但し、1950年代から強国のために行われてきたエリート教育が改革開放後も続けられ、その影は今も残っている。この歴史的な原因で、各学校間の教育資源、ハード面やソフト面にかかわらず、共に格差が存在している。ハード面とソフト面とも優れている学校は進学率が高いため、人気校となっている。

いつの間にか、「不要譲孩子輸在起跑線上」という言葉が中国で流行りになった。和訳すると、「子供をスタートラインで負けさせない」となる。この言葉からは激しい競争の中で子供を有利な教育環境に入れようという中国の親たちの必死さがうかがえる。

そこで学校選択現象が現れた。学校に協賛金という形で金銭を支払って入学資格を取る例が過去には多くみられ、もちろん現在も一部の都市や農村部にはあるが、上海の場合、政策上、入学する予定の学校の所在する学区に戸籍を持っていることが要求されている。

中国の戸籍は通常、自分が所有している不動産に登録するため、人気校に入りたい場合、学校の所属する学区に不動産を構えないと、戸籍も当該学区に入らない。そこに「学区房」というものが特別な不動産として登場した。人気があるため、たとえ古くても、単価は非学区房より高くなっている。

また、人気校に憧れている人が多いため、学区の戸籍を持つ適齢児童数が人気校の実際の生徒募集数を上回ることが多い。学校側はこの問題を解決するために、自ら厳しい条件を設置して生徒数を絞る。たとえば、入学するまでに既に当該戸籍地に3年以上住んでいることや子供と共に両親の戸籍も同じ不動産にあることや、同じ学区の幼稚園や小学校に通っていたことを要求する。

上海市では「人戸分離(戸籍地と居住地が異なる)」現象がここ数年益々激しくなったことで、2010年から居住地に近い学校への入学テストを一部の区で行い、2012年はテスト範囲を全市に拡大している。だが、生徒募集時は「戸籍地と居住地が一緒となっている生徒を優先的に募集する」という規定があることから、均等化した教育環境が整えられていない今、人気校を巡っての学校選択現象は改善されないと思う。

子供が明るく健康に育ってくれたらそれでいいと思う一方、親として頑張って子供に少しでもいい教育をうけさせたいと思う気持ちもなかなか抑えられない。


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