中国での販路開拓に向けた展示会の活用

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最近、日系の中小企業において、“製造拠点としての中国”に代わり、“市場としての中国”への関心が相対的に高まりつつある。労働者賃金の上昇や、行政による内需振興策の効果もあり内需は確実に拡大している。但し、当然ながら中国の市場は均一ではなく、地域的な格差が大きく、商流や事業者も地域的に多様である。

このような巨大な市場へ参入する場合のアプローチとしては、どの地域から着手し、顧客や代理店を確保するかの判断や、自社製品が実際にどの程度魅力的と評価されるかといった多くの点を検討する必要に迫られる。実際に有望な都市を廻り、提携候補企業との面談や、消費の現場を視察することで視野が広がるものの、多くの時間やコストを費やすことになり、その時点で二の足を踏む場合も多い。また、中国では企業経営者が海外企業との面談に臨み、直接、条件交渉にあたるケースも多いが、日本の企業経営者がそのために一定期間、日本を不在にすることは困難な場合も想定される。

そこで、代理店の候補企業や、自社製品の評価、現地ライバル企業の製品情報を効率的に収集する機会として、展示会への参加と積極的な活用を勧めたい。

今月上旬、中国最大の総合展示会である広州交易会が開催された。広州交易会は、中国広東省で年2回開催される、1957年に創設された最も歴史のある展示会である。創設当初は、限定された中国の貿易商社と海外企業の商談窓口であった。その後、中国のメーカー自身が展示を増加させたことにより、多くのバイヤーが来訪する見本市として規模が拡大してきた。このため短期間に中国各地の事業者と出会うことが可能である。

今回は4月15日から5月5日まで、一週間毎に展示する製品類を替えながら開催された。当該期間に中国全土および海外から約25,000社あまりの企業が参加し、中国国内外の200もの国や地域から計21万人が来訪したと報告されている。また、本展示会の開催時期に合わせ、複数の個別分野の専門展示会が周辺地域で開催されていた。

最近は日本でも、中国で販売される様々な商品仕様や取引価格の情報は書籍やインターネット等を通じて入手できるようになっている。しかし展示会の会場で、企業経営者や購買担当者と情報交換や商談交渉から得られる情報は貴重であるだけでなく、各地に人脈を構築することも期待できる。また、現地で理解されやすい企業広告や商品PRの方法等は、他社の展示や活動を視察することで把握できる。中国企業も展示会をマーケティング・ツールとして有望視し、効率的な情報収集に活用している。実際に、様々な専門分野の展示会は、中国各地で年間千回以上開催されるまでに増加しており、日系企業も有効に活用すべきである。

当該期間の広州は、短期間に多くの来訪者が集中することから、ホテル・交通も含め大混乱となるため、決して快適な環境とは言い難い。しかし、非常に活気に溢れた中国での商取引・市場開拓のエッセンスを肌で感じておくことは、今後の中国展開を進める上で有用な体験になると思われる。


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