近年、日本の新聞などに登場するモンゴルは、「資源国」としての姿を華やかに見せている。モンゴルは豊富な鉱物資源を埋蔵し、その主な資源は銅、金、蛍石、モリブデン、石炭などである。ウランも注目を集めている。そして、こうした鉱物資源開発に関し、日本でも大きく報じられ話題となったのが、主に銅や金を産出するオユ・トルゴイ鉱山と、石炭を産出するタバン・トルゴイの開発案件である。

オユ・トルゴイは、2009年10月にカナダのIvanhoe Mines社他とモンゴル政府との間で開発に関する契約が結ばれている。何より、銅が810億ポンド(約3,700万トン)、金が4,600万オンス(約1,400トン)埋蔵される世界最大級の鉱山開発案件として、世界の注目を集めた。現在は設備の建設などが進められており、2013年に商業生産が開始される予定である(埋蔵量はIvanhoe Mines社ホームページより)。

一方、タバン・トルゴイは、埋蔵量65億トンで世界最大の炭鉱と言われている。製鉄に使われる原料炭も多く含まれており、その開発は世界の注目を集めている。モンゴル政府は2010年中に国際入札を実施することを発表しており、日本の複数の商社も関心を示していることが報道されている。

モンゴルの鉱業は、GDPの22%を占めている(2009年、モンゴル統計局)。世界的金融危機による資源価格の下落から2007年の29%から比率は低下しているものの、最大の産業分野である。

大型資源開発による生産・輸出の拡大は、モンゴル経済に大きなインパクトを与える。上述の通り、2013年にはオユ・トルゴイでの商業生産が開始される。その後のタバン・トルゴイ炭鉱の稼動や、その他の戦略的鉱床の開発により、モンゴルのGDPが大きく引き上げられることが予想されている。IMFのデータによると、2008年の1人あたりGDPは1,936ドルであった。それが、2015年には、4,199ドルまで拡大すると予想されている。

日本としても、2009年7月、経済産業省が発表した「レアメタル確保戦略」では、海外資源確保のための資源外交の戦略的取組として、戦略的互恵関係の構築の他、「鉱山周辺インフラ整備等へのODAツールの活用」「技術移転、環境保全協力等我が国の強みを発揮した協力」が掲げられている。2010年10月のモンゴルのバトボルド首相との会談の中で、大畠経済産業相は、鉄道などインフラ整備とセットでのタバン・トルゴイ開発協力を表明している。鉱業は、国家の発展戦略上重要な意味を持つため、参入にあたっては許認可が必要な分野である。国の規制や許認可の変更によるリスクが大きな分野であると言えるが、官民一体となった「オールジャパン」での取り組みで、出口を見据えた支援がようやく始まると言えよう。


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