AI長期株価予測モデル構築プロジェクトAI Project

AI関連技術による
業界で初めての
長期株価予測モデル

人工知能(AI)の発展が急激に進む現在、一部の領域においてAIは既に人間を超えつつある。ならば、AIを活用することで長期的な株価の動きも予測できるのではないだろうか。5分先など、短期的な株価予測は既に行われていたが、1ヶ月以上先の予測となると前例はない。大和総研内のプロジェクトメンバーたちは、どのようにして人工知能を用いた株価予測モデルの構築に挑んだのか。その姿に迫る。

プロジェクトメンバーProject Members

  • フロンティアテクノロジー部
    次長
    加藤 惇雄
  • フロンティアテクノロジー部
    上席課長代理
    吉田 寿久
  • フロンティアテクノロジー部
    課長代理
    參木 裕之
  • フロンティアテクノロジー部
    課長代理
    北野 道春
前人未到の株価予測モデルに挑む

フロンティアテクノロジー部でビッグデータやAIに関わる専門部隊が立ち上げられたのは2015年のこと。グループ内に蓄積した証券に関わる膨大なデータを分析しながら、そのデータを大和証券の業務コンサルティングや、リサーチ/コンサルティング/システムの連携で活用することが大きな目的だった。とはいえ、発足当初は、プロジェクトマネージャーの加藤をはじめ数人からなる小さなチーム。少人数ながらデータ分析や勉強会に取り組み、業務に貢献する実績を積み重ね、社内での存在感を高めつつあった。
そんなチームに転機が訪れたのは、経済市場やマーケティングに強みを持つ吉田が加わってからのこと。
「オープンデータを活用して株価を予測できないか」。吉田が掲げたアイディアは、彼が証券システムの企画から保守に携わる中で、長年にわたって温め続けてきたものだった。株価予測であれば、他社でも同様の試みが行われていたが、それはニュースの内容などから株価の上下を予測する短期的なもの。しかし吉田が考えたのは、1ヶ月先の株価を予測するという難易度の高いものだ。まだ誰も成功したことがない、前人未到のプロジェクト。大和総研にしかできない新しい試みが、ここから始まった。

フロンティアテクノロジー部 上席課長代理 吉田 寿久フロンティアテクノロジー部 上席課長代理 吉田 寿久
VOICE

私は大学時代から個人で投資を行っており、証券業界に関わりたくて当社に入社しました。そのため、今までにない短期、長期、超長期といったさまざまな投資方法に合わせた予測モデルを構築したいと考え続けてきました。もちろん実現が困難なことは分かっていましたし、「できるわけがない」と言われたこともありました。実際に開発を始めてから構築手法に迷う場面も多々ありましたが、周囲の意見に流されず、自分たちが納得できるやり方を貫いた点がモデルの実現につながったのではないかと考えます。通常はお客さまから依頼をいただいてプロジェクト化することが多いのですが、今回は大和総研が主体となって新しい価値を提供するという点に特色がありました。何よりも自分たち自身がつくりたいサービスだったからこそ、高いモチベーションで業務に取り組むことができました。今回のプロジェクトは、豊富なデータやデータ分析の知見はもちろん、実現できるかどうか分からないことにチャレンジする社風のある大和総研だからこそ叶えられた事例のひとつだと言えます。

ユーザーの資産に影響するサービスだからこそ
精度向上には妥協できない

チームが開発に取り組んだのは、機械学習を用いて決算情報を分析し、1ヶ月先に株価が上昇する銘柄を選定する予測モデルだ。1ヶ月もの先の予測は不可能だと思われていたが、それをデータサイエンスによって実現するのだという。
だが、周囲の反応は懐疑的だった。「本当に実現できるのか」と。無理もない。株価予測というアイディア自体は昔から存在していたが、当時、確固たる手法は確立されていなかった。加藤と吉田たち自身、100%の勝算を持っていたわけではない。それでも、どうしても成し遂げたいという彼らの思いは強かった。

だが、モデル構築を始めてからしばらくの間は、良い結果が出なかった。社内外のデータサイエンティストに相談し、何とかモデル自体は構築できたが、結果が安定しない。とてもお客さまに提供できるレベルではなかった。
そんな時、プロジェクトにブレイクスルーをもたらしたのは、高度なデータ分析とプログラミングスキルを持つ北野の存在だった。北野は、プロジェクトメンバーの公募を受けて参加。大学院でもデータ分析の研究を行っていた北野は、同チームの活動に以前から注目しており、自ら志願してプロジェクトに加わったのだった。

フロンティアテクノロジー部 課長代理 北野 道春フロンティアテクノロジー部 課長代理 北野 道春
VOICE

入社時からデータ分析に関わる業務に取り組みたいと思っていたため、公募が出た際はすぐに応募しました。どこにも前例のない予測モデルを構築し、お客様へ提供するという難易度の高いプロジェクトでしたが、この経験が自身のキャリアの中で最も大きな財産の一つになったと感じています。
スタートアップ企業と連携したオープンイノベーションが流行している中で、当社のような大手の総合証券会社グループが、独自の分析モデルを外部に流出させず完全に自社で内製した点は、このプロジェクトの特色の一つです。
自由にアイディアや意見を言える環境を与えてくれたからこそ、高いモチベーションを維持したままプロジェクトに取り組むことができました。やる気がある人間にはチャンスを与えようという風土も当社らしいポイントですね。

フロンティアテクノロジー部 課長代理 參木 裕之フロンティアテクノロジー部 課長代理 參木 裕之
VOICE

私は大学で機械学習やデータマイニングの研究を行っており、実務でも活かしたいとプロジェクトへの参加を希望しました。モデル構築に向けてプロジェクトメンバーと試行錯誤している時の雰囲気は、大学の研究室のようで懐かしかったですね。プロジェクトを通じて毎日のように株の話をして、金融マーケットに対する知識や感度も高めることができました。同期の北野とは、入社前からデータマイニングのコンペに一緒に参加して入賞するなど、昔からタッグを組んでいました。私は地道に考えるタイプで、一方の北野は荒削りながらもチームをリードするタイプ。対照的ながらも、北野が組み上げたプログラムを私が引き継いで整理し、予測モデルの精度を高めていくという面において、うまく連携ができたのではないかと思います。

サービス開始直前まで続いたブラッシュアップ

当初、課題になっていたのは吉田と北野のスキルをいかにマッチングさせるか。株に詳しく、データのハンドリングにも習熟した吉田と、高度なエンジニアリングスキルを持つ北野。2人の異なるスキルセットを掛け合わせなければ、このプロジェクトは成功しない。そこで北野は、まずプロジェクト内のコミュニケーションツールとして専用のWebサービスを用意し、モデルのパフォーマンスやデータの傾向を可視化。モデルの改善を加速させ、一定期間であれば株価予測に成功するようになった。
その後、北野の同期であり大学院で機械学習やデータマイニングの研究を行っていた參木がチームに参加。

北野の役割を引き継ぎ、モデルのブラッシュアップに携わった。試行錯誤しながら動くタイプの北野と対象的に、參木は細かいところに気が付き、荒削りなアイディアを整理整頓してまとめ上げるなど、チームを安定させた。「予想通り、2人は良いタッグになった」と加藤は頬を緩める。
株価予測モデルの構築には、一般的なシステムとは異なる緊張感がある。成果が数値としてシビアに表れ、ユーザーの資産に直接的に影響を及ぼす。そのため、未完成なサービスを提供することなどありえない。限界まで汎化性能を向上させたい。普通のシステム開発であればありえないことだが、サービス開始の直前までモデルの精度向上に向けた取り組みは続けられた。
そして2017年5月12日、ついにサービスを開始。決算発表後の1ヶ月で株価が上昇する可能性が高い20銘柄の情報提供が開始された。それから約1ヶ月後。全銘柄の平均騰落率がTOPIX比で5.42%上回った。まさに成功と言って差し支えのない成果だ。業界には激震が走った。
プロジェクトの成功要因について、「大和総研だから実現できた」と彼らは口を揃える。大和証券の基幹システムを支え続けてきた地盤、データサイエンスのノウハウ、社員にチャンスを与える風土。どれが欠けても成功はありえなかっただろう。

フロンティアテクノロジー部 次長 加藤 惇雄フロンティアテクノロジー部 次長 加藤 惇雄
VOICE

私は、大和証券とやりとりしながらメンバーが自由に行動できるよう、スムーズにプロジェクトを進めるマネジメントの立場にありましたが、実際にデータを分析してモデルを構築するのは吉田たちであり、できるだけ彼らを信じて任せるように心がけました。ですが、一般的な案件とは異なり、サービス開始の直前まで分析モデルの精度向上に取り組んでいるところにもどかしさを感じて、「そろそろ試行錯誤はやめよう」と、メンバーと激しく議論を交わしたこともありました。ただし、実際には既に試行錯誤のフェーズを超えており、自信を持ってお客さまに提供できるよう、最後のブラッシュアップに取り組んでいるところだったのですが。彼らのような高い専門性と独自のアイディアを持ったメンバーは、大和総研のコアコンピタンスの体現でもあります。この事例は、誰もやったことがないという点で新規性があり、かつFintechとしても最先端の事例である、当社らしさが色濃く出たプロジェクトのひとつです。

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