DX推進による大和証券
業務
端末の
ロケーションフリー化

新技術の積極採用で
時代が求める
ワークスタイルを実現

最前線の営業員を始め、コンタクトセンター、バックオフィスなど、大和証券の社員・スタッフたちの日常業務に欠かせないのが、パソコンや電話、モバイル端末などのオフィスインフラ。機器の老朽化や、時代に即した最新の環境を整えるため5〜10年おきに入れ替えられるが、その大規模更改が2019年冬にあった。今回は、東京の本部と全国約120の営業店合わせて約10,000台の業務端末および、デスクのIP電話を一斉に入れ替える。大和証券・大和総研の役員を含む関係者により、新時代のオフィスインフラに関する議論が始まったのは実施の3年前。1年におよぶ構想フェーズで出た結論は、これまでの「シンクライアント」から「ファットクライアント」への移行という大転換だった。

プロジェクトメンバーProject Members

  • システムインフラ
    第二部
    プロジェクトマネージャー
    平塚 桂子
  • システムインフラ
    第二部
    2in1端末 設計・構築リーダー
    大原 広生
  • 証券システム
    第一部
    アプリケーション開発リーダー
    渡邉 貴之
  • プラットフォーム
    基盤第三部
    ネットワーク設計リーダー
    山田 敦史
  • システムインフラ
    第二部
    パブリッククラウド
    堀 勇輝
  • システムインフラ
    第二部
    移行統括
    保坂 美穂
モバイル端末の進化が後押しした
「ファットクライアント」への回帰

デジタル技術の進化は目覚ましく、前回のオフィスインフラの大規模更改から7年で環境は大きく変わっていた。前回はセキュリティ強化の観点から、各自のパソコン内にはアプリケーションやデータなどを入れず、社内ネットワークで結ばれたデータセンターで集中処理する「シンクライアント」を導入。これなら万が一パソコンを紛失しても、重要な情報が社外に漏れる恐れがない。しかしその後、本体内にアプリやデータを持つ「ファットクライアント」であるモバイル端末のセキュリティや性能が急速に向上していた。

今回、新時代のオフィスインフラとして重要なテーマとなったのが「ロケーションフリー」である。自宅や外出先でも、会社にいるのと同じように業務ができる環境。その実現に最新のモバイル端末は最適にも思われたが、本格的に業務用とするには未知の部分も少なくない。大和証券グループ各社向けに、端末や認証・OA 系システム、営業店インフラなどを取りまとめている平塚がプロジェクトマネージャー(PM)に任命されたとき、実績のあるシンクライアントで進む方針が大和証券・大和総研の上層部の議論において暗示されていた。しかし、新たなオフィスインフラは7年ほど先まで使われることになる。平塚のPM就任から3ヵ月後、時代の先を読んだ結論はタブレットとノートパソコンの双方の機能を備え、携帯電話の通信網にもつながる「2in1端末」を使った「ファットクライアントへの移行」だった。

システムインフラ第二部 プロジェクトマネージャー 平塚 桂子システムインフラ第二部 プロジェクトマネージャー 平塚 桂子
VOICE

これほど大規模かつ重要な事業のプロジェクトマネージャーを自分にやり遂げることができるのか最初は不安でした。しかし大和証券向けシステム開発部門あげての支援をもらい、頼もしいメンバーが集結し、力を発揮してくれたことで何とかプロジェクトを遂行することができました。体制としては、私と私の片腕となるプロジェクトリーダーの他、アプリ・端末・IP電話・ネットワーク・パブリッククラウドの5チームのリーダーを中心に開発を推進。プロジェクトが進むほど、メンバー一人ひとりがよりよいサービスを提供するという目標に向け、チームを超えて一致団結するようになりました。結果として、PMとして全体を統括する負荷が下がり、私はユーザとなる大和証券や、社内の他部署との折衝・調整に軸足を置くことで、プロジェクトを推進することができました。今回のプロジェクトを通して、企業のビジネス戦略とシステムの整合が新たな企業価値創出に繋がるということを強く実感し、より深い真の顧客目線で考えるようになったのは、今後の仕事にも活かせると思っています。

パブリッククラウドの活用により
社内ネットワークの負荷を抑える

ファットクライアントへの移行が決まり、平塚たちがシステムの概要設計に本格的に着手した早い段階で、1つの大きな問題が浮き彫りになった。「ネットワークの負荷増大」という問題である。ファットクライアントでは、アプリのデータやファィルのダウンロードなど端末とデータセンター間のやりとりが増えるため、「センターの入口」が渋滞する恐れがあった。ネットワーク担当の山田を中心に、セキュリティ担当の堀などプロジェクトメンバーが一丸となり、検討する日々が何日も続いた。開発コストは増すことになるが、社内ネットワークの増強を図るしかないか。

プロジェクト全体で考え抜いた解決策は、2つ。ネットワーク負荷の原因となっていたオンライン会議ツールを含むOAサービスについて、パブリッククラウドを採用すること、そして、ネットワーク構成はセンターのネットワークを利用するのではなく、端末のインターネット回線を利用し、直接パブリッククラウドにアクセスするローカルブレークアウト技術を活用することだった。問題のない業務をパブリッククラウドに移せば、社内ネットワークの負荷が抑えられる。堀のチームが調べた結果、十分な安全性を担保しつつ切り出せる業務があることを確認できた。「一定の業務をパブリッククラウドに托すという方法を見出せたのは、今回のプロジェクトにおける大きなターニングポイントになったと思います」。平塚がそう振り返るように、この解決策によりプロジェクトは一気に前進を始めた。

一方、「ロケーションフリー」を実現するためには、まだ解決すべき問題は多くあった。コンプライアンスの問題から電話でのお客様との商談はセンターでの録音管理が必須であり、また、口座開設や注文手続きにおいては店舗にある業務パソコンからの入力が必要なため、訪問先で手続きを完了させることができない状況であった。この壁を乗り越えるために、アプリケーション開発担当の渡邉と端末の開発・構築担当の大原がタッグを組み、導き出したのは、2in1端末とスマートフォンとの連携だった。端末の画面で顧客情報を確認しつつ、ワンタッチで電話をかけお客様との商談や手続きを進めることができる、営業員の用途に適った使い勝手の良さを実現できた。

システムインフラ第二部 パブリッククラウド 堀 勇輝システムインフラ第二部 パブリッククラウド 堀 勇輝
VOICE

私がこのプロジェクトに加わったのは初期の段階、まだシンクライアントでの更改が想定されていた頃でしたが、パブリッククラウドの活用についても検討することになりました。パブリッククラウドについて信頼性の確認を行った結果「業務によっては十分利用できる」と判断しました。それがファットクライアントへの移行を後押しすることになるのですが、パブリッククラウドも契約すればすぐ使えるわけではありません。今回導入したマイクロソフト社の「Office365」も、セキュリティや認証認可の仕組みなどを強化した上で導入しています。一方、パブリッククラウドならではの利便性を再認識したのが、オンライン会議システムの追加導入でした。2in1端末の配布後、利用者の多くから「ミーティングにも使いたい」との声が出て、Office365の提供サービスの中にあった「Teams」をすぐに追加し要望に応えることができました。

証券システム第一部 アプリケーション開発リーダー 渡邉 貴之証券システム第一部 アプリケーション開発リーダー 渡邉 貴之
VOICE

新たに導入する2in1端末でも、以前から使い慣れている業務パソコンと同じように作業ができる。さらに、以前できなかったスマホと端末の連携やスマホでの商談が可能になる。そうした、新時代のオフィスインフラにふさわしい使い勝手の向上を実現するのがアプリ開発チームの使命でした。これとは別に、オフィスのIP電話の基盤システム更改も我々の担当で、とくにコンタクトセンターのシステム移行は難しい仕事でした。連休を利用して一気に新システムへ。問い合わせ電話がつながらないなど許されるはずもなく、バックアップを用意して作業を進めました。休み明けに出社したコンタクトセンターのスタッフは、システムが替わったのを意識することもありません。新しいアプリの使いやすさに喜んでいただけるのはもちろん、気づかないところでもユーザーの日常業務を支えていることに今の仕事のやり甲斐を感じます。

コロナ禍の混乱でも活きた
ロケーションフリーの早期実現

全国約120の営業店、合わせて約10,000台の端末が対象となる。通常は半年ほどかけて行う規模だが、新システムへの移行を1ヵ月という短期間で完了させることが求められていた。業務効率が大幅に向上する新たなインフラを全国の営業員に早期に展開させ、お客様に質の高いサービスを提供したいという大和証券の思いによるものだが、実行を担うプロジェクトチームにとっては終盤に待つ最大の難関だった。
短期決戦に備え、社外のベンダーにも協力を求めて陣容を整える。作業は営業店が休みの週末にしか行えないため、保坂たち移行統括チームは6つのフェーズに分け、毎週末に段階的に進めていった。大和総研の開発部署が普段業務を行うビルの一室に、営業店での実作業を担うベンダーの担当者を含めた100人近くが集まり、進捗を刻々と確認。トラブルが起きれば即座に対処法を指示し、スケジュールに合わせていく。そうして2019年12月下旬、営業店における新時代オフィスインフラへの移行は無事完了した。
その後の2020年春。日本でも新型コロナウィルスの感染拡大が深刻化し、4月には全国に緊急事態制限が発出された。多くの会社がテレワークへの急な対応に苦慮する中、大和証券は混乱を最小限に留めることができた。「ロケーションフリー」をテーマとする次世代オフィスインフラへの移行を、前倒しで完了させていたことが大きな力を発揮したのであった。

システムインフラ第二部 移行統括 保坂 美穂システムインフラ第二部 移行統括 保坂 美穂
VOICE

私は入社した年の、初配属から間もなく今回のプロジェクトに加わることになりました。移行統括は、全国120の営業店での、端末の入れ替えを含む新システムへの移行作業を管理・推進するチーム。各種の会議や移行作業当日の資料の用意、関係者間の連絡役など先輩たちのサポートが主でしたが、入社早々これほど大規模で緊張感に満ちたプロジェクトの一員になれたのは貴重な経験でした。また、新しい2in1端末の活用を促すため、都内2ヵ所の営業店で使い方のレクチャーや質問対応も行いました。システム開発の担当者が、ユーザーである営業員の方から直接話を聞く機会はめったにないため、これも得がたい経験になっています。今回のプロジェクトで学んだのは、自分に何ができるかより相手が何を求めているのかを考える大切さ。今もこの姿勢を忘れず日々の業務に取り組んでいます。