条例による民泊規制はどう進めるべきか

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2017年12月07日

  • 経済調査部 市川 拓也

いわゆる民泊新法(住宅宿泊事業法)において注目点の一つであった日数の算定方法が明らかになった。「住宅宿泊事業法施行規則」(2017年10月27日公布)では「正午から翌日の正午まで」を1日と算定する。このカウントの仕方で、「四月一日正午から翌年四月一日正午まで」の間に宿泊させた日数が180日を超えない必要があるから、筆者の理解が正しければ、チェックイン日を一日置きとして一泊ずつとするパターンでは、理屈上は最大360日の営業となる。


さすがに、毎回丸一日が規則的に未使用となるような営業形態が主流になるとは考えにくく、常識的には連泊やチェックイン日が連続することもあろうから、実際は営業しない日も多くなるものとみられる。加えて、民泊新法では「住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるとき」には、合理的に必要と認められる範囲で、条例によって民泊の提供日数を制限することができることになっている。このため、区域によっては上記の180日制限による営業日数を大きく下回るところも出てくるものとみられる。


民泊運営のルール策定を検討してきた京都市の「京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」は、住居専用地域では閑散期の1月から2月の約60日に限定して営業を認めるとした骨子案を示した。繁忙期の営業は旅館業法下の事業者との競争の問題も生ずるが、閑散期のみの営業ということであれば、民泊が宿泊施設不足を補う役割はそもそも小さくなる。他の自治体では曜日による制限を検討しているところも複数あり、実現すれば週単位の宿泊を想定する旅行者の選択肢からおのずと外れることになる。これらの規制は採算重視の民泊事業者にとって息苦しいものとなろう。


ただし、こうした規制は、家屋が密集した一部の都市型の自治体に限られる可能性もある。民泊をてこに旅行者を呼び込もうという自治体は、あえて区域や日数の規制を緩やかにする、あるいは多少の外部不経済があっても条例で規制しないという判断も戦略としてあり得る。同法の施行は2018年6月15日(一部を除く)であり、残された期間は半年程度。今後、各自治体は限られた時間の中で、条例策定の是非や規制内容に関し、「法令の趣旨」と「住民の意思」との間でバランスを図りながら検討を進めることになろう。

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