祭りと日時と時差Biz

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2017年08月08日

  • 中里 幸聖

今夏、江戸三大祭りの一つである富岡八幡宮例大祭(深川八幡祭り)の三年に一度の本祭りが行われる。弊社の本社は、深川八幡祭りに神輿を出す地区に所在し、弊社社員の希望者が大勢担ぎ手に加わっている。ちなみに江戸三大祭りには、赤坂の日枝神社の「山王祭」、神田明神の「神田祭」が数えられる。

深川八幡祭りのハイライトともいえる連合渡御(連なって神輿を進めること)は、今年は8月13日(日)である。大神輿53基が永代通りを次々と進む雄姿、酷暑の中での沿道からの盛んな水掛けは、“THE夏祭り”という感があり、日本の底力を実感する。深川八幡祭りは別名「水掛け祭り」とも言われ、神輿と担ぎ手に盛んに水が掛けられるが、猛暑の時期に行われるので水が掛かっても気持ちが良い。

深川八幡祭りに比べれば規模は小さいが、筆者が社会人になる前に暮らしていた与野(現さいたま市)でも神輿が練り歩く夜祭りが行われている。筆者が子供の頃は、毎年7月14日、15日開催と決まっており、曜日とは関係なく日付固定であったが、現在は7月の第3土日開催となっている。一方、関東一の提灯祭りと言われる久喜提燈祭りは、提灯に彩られた山車の曳き廻しは7月12日、18日と日付が決まっていて、曜日は考慮されない。

子供の頃は曜日を気にしていなかったが、社会人になってみると、やはり土日祝日の開催の方が行きやすい。一方、伝統ある祭りは神社の祭礼に基づくものが多く、祭礼日程に合わせるのが本筋とも考えられる。曜日を基準として日常生活が営まれるようになったのは明治時代以降であるので、それ以前は祭りの開催は日付を基準としていたと推測される。

より多くの集客が見込める、神輿の担ぎ手・山車の曳き手が参加しやすい、などが祭りの開催を日付基準から曜日基準へ移行する理由の一つであろう。地元自治体、経済界、神輿や山車の差配等を担う祭り関係者らの思惑が一致すれば、こうした移行が実現しやすいと思われる(神社側の理解も重要である)。その際、議論をリードするのは行政であることが多いのではないだろうか。

行政が音頭を取って、日程や時間を移行しようとする施策では、時差Biz、キッズウィークが議論となっている。

クールビズを浸透させた立役者の一人でもある小池百合子東京都知事が、時差Biz推進の先頭に立っており、ある程度普及するのではないかとの見方もある。時差Bizは、「通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす働き方改革のひとつ」(東京都「時差Biz」ウェブサイトより)であり、弊社も参加企業に名を連ねている。クールビズについては、時代の要請とうまく合致した面もありすっかり定着したと思うが、時差Bizはどうだろうか。何度も導入の議論がありながら実現していないサマータイムを連想してしまうが(※1)、時代とうまく響き合うかが鍵となろう。

キッズウィークは、「学校休業日の分散化、有給休暇取得の促進、休日における多様な活動機会の確保の取組を官民一体として推進」(首相官邸「大人と子供が向き合い休み方改革を進めるための『キッズウィーク』総合推進会議」ウェブサイトより)しようとするものである。政府は来年度(2018年度)からの導入を目指している。民主党政権時に政府が音頭を取った「休暇分散化」を連想してしまうが(※2)、キッズウィークはいわゆる「働き方改革」や「教育再生」等とも連携している点が異なる。

日程や時間を移行しようとする施策は、人々の生活と直接的に関わり、合理性だけでは受け入れられるとは限らない。その時々の潜在的な要請を、人々が受け入れやすい形で提示することが求められる。クールビズのように、時差Biz、キッズウィークが定着するかは興味深い。

(※1)日本でも連合国による占領期の1948年から1951年に実施されたが、不評で打ち切られた。
(※2)政府は、「需要の平準化を通じた旅行コストの低減や観光産業の生産性の向上・雇用の安定化等様々な効果をもたらす」(観光庁「休暇分散化ワーキングチーム」ウェブサイトより)としていたが、各種アンケート等では反対意見が多かったように記憶している。

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