国民的ゲーム30周年に考える家庭用ゲームとスマホゲームの関係

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2017年02月28日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 浜島 雄樹

国民的ゲームのドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)が30周年のメモリアルイヤーを迎えている。ゲームを遊んだことがない人であっても、水色で涙の形をしたキャラクターの「スライム」を見かけたり、ファンファーレから始まるタイトル曲を耳にしたり、ドラクエに関する何かに接した経験があるのではないだろうか。実施中の「ドラクエ30周年記念プロジェクト」は日本ゲーム大賞の経済産業大臣賞に輝いており、続編ゲームの発表やミュージカル、企画展、体験型イベントと様々なイベントを開催している。筆者も会場にて初めて出会った人達とチームを組み、ドラクエの世界観の中で謎解きをする、体験型イベントのリアル脱出ゲームに参加しメモリアルイヤーの盛り上がりを体感した。

ドラクエシリーズが30年間変わらない魅力を持ち続けていることと対照的に、ゲームを取り巻く環境は年々変化してきている。下表はドラクエを手がける(株)スクウェア・エニックスのデジタルエンタテイメント事業の売上をまとめたものである。家庭用ゲーム機向けゲームであるHDゲーム(以下、家庭用ゲーム)の売上高は堅調に推移する一方、スマートデバイス・PCブラウザゲーム等(以下、スマホゲーム)の売上高は2016年3月期には4年前の4倍に急伸した。家庭用ゲームに多くの人気タイトルを持つスクウェア・エニックスのような会社においても、スマホゲームが家庭用ゲームを売上構成比で上回るほどの存在感を示しているとは驚きであった。

スクウェア・エニックス デジタルエンタテイメント事業売上構成比

スマホゲームの多くは無料で提供されているため、お金をかけずに一通り遊ぶことができる。売上につながるのは有利に遊ぶ、効率よく遊ぶといった、より楽しむためのオプションに対する課金部分だ。これらを家庭用ゲームで得るにはゲームのプレイ時間を積み重ねる以外にないため、スマホゲームの課金部分は時間をお金で買うことが可能な仕組みとも言える。ひとつの趣味にかける時間が短くなっている現状に、ゲーム会社が対応し提示した選択肢がスマホゲームという形態なのだろう。

家庭用ゲームで人気のタイトルがスマホゲームとして提供されることも珍しくなく、取り上げるコンテンツ面での境界はなくなりつつある。一方でゲームの基本的な内容や仕組みといったゲームデザインは、依然として家庭用ゲームは家庭用ゲーム、スマホゲームはスマホゲームとして完結しているものがほとんどだ。今後ともそれぞれ独自の道を歩むのか、相互に連動させ家庭用ゲームとスマホゲームをあわせてひとつのゲームとして提供されるようになるのか、現時点で判断することは難しい。「ドラクエ30周年記念プロジェクト」で発表された続編ゲームはこのタイトルとしては初めて、複数の家庭用ゲーム機向けに提供されると発表があった。一番売れている家庭用ゲーム機にのみ提供するという今までの方針を変えた背景には、多くの人に遊んでもらいたいという思いがあるため、家庭用ゲームより多くの人が遊ぶスマホゲームについても提供の対象となる可能性はあるだろう。数年後には初めての家庭用ゲーム兼スマホゲームとして、ドラクエの続編が発表されることがあるかもしれない。

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マネジメントコンサルティング部

主任コンサルタント 浜島 雄樹