ソーシャルレンディングについて考える

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2017年02月06日

近年、ソーシャルレンディングを扱う企業が徐々に増えている。メジャーとまでは言えないものの、個人の認知度も少しずつではあるが、上がっているように感じる。ソーシャルレンディングとは、主にインターネットを用いてソーシャルレンディングの運営企業が、お金を貸したい人(資金供給者)と借りたい人(資金需要者)を結びつけるサービスである。

日本におけるソーシャルレンディングの場合、具体的には金融商品取引業者の登録をした運営企業がファンド(※1)を組成し、資金供給者である個人から資金を集める。そして、不動産業者、再生可能エネルギーを営む事業者、新興国での事業者などの様々な資金需要者を運営企業が審査した上で資金を貸与する。期限を迎えたら、資金需要者からファンドを通じて、個人に利子と投資元本が支払われる。ただし、投資対象の事業者が思うように収益をあげられず損失を出した場合や運営企業に問題が発生した場合、元本割れや利子が不払いとなる可能性もある。

個人を惹きつける理由は高い利回りであると思われる。1年以上2年未満の定期預金金利が0.03%前後であったり、固定金利3年満期の個人向け国債が0.05%と低い利回りであったりする中で(※2)、ソーシャルレンディングは年率3%を超える商品がポピュラーであり、なかには10%を上回る商品もある。期間は3ヶ月程度のものから、長いものだと数年になるものがあり、1万円程度から投資可能である。人気の高い商品は有名歌手のコンサートチケットのようにわずか数日間で売り切れてしまうものもある。

しかし、元本保証ではないこと以外にも注意すべき点が多い。株式や債券などの金融商品とは異なり、一般的には途中換金ができない。また、直接に株式や債券を購入するのとは異なり、その仕組み上、資金需要者に関する情報開示が他の金融商品と比べると著しく乏しく、投資判断が難しい。例えば、国内の再生可能エネルギー事業への投資という大ざっぱな案件の中身が分かっても、具体的な事業者の財務状況、事業のキャッシュフローなどについて情報を得ることは難しい。投資対象が東欧や東南アジアのような新興国での事業であれば、情報の取得はなお一層困難である。言うまでもなく、ソーシャルレンディングを通じて資金を提供する際には、あくまでも自己責任で、そのリスクの大きさやファンドの仕組みなどについて十分に理解することが前提となる。

ソーシャルレンディングはFinTechが生んだ取引の一例であり、シェアリングエコノミーの要素も持つとされる。日本には莫大な家計金融資産があるが、それを十分に活用できているとは言えないだろう。ソーシャルレンディングやクラウドファンディング、市民ファンドなどはソーシャルファイナンスと呼ばれるが、それらが日本でどのように拡大していくか注目していきたい。

(※1)ファンドの事業形態として主に利用されるのは商法で規定される匿名組合契約である。営業者(ソーシャルレンディングの場合は運営企業)と組合員(個人投資家)との2者間の契約に基づくもので、組合員の出資を営業者が受け、営業事業から得た利益について出資者たる組合員に分配することを約束し、成立するものである。
(※2)1年以上2年未満の定期預金金利は日本銀行「定期預金の預入期間別金利(新規受入分)」、固定金利3年満期の個人向け国債は財務省のデータ。

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神尾 篤史
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 神尾 篤史