自然災害の脅威に改めて注目されるBCM(事業継続マネジメント)とは

RSS

2016年09月15日

  • 横溝 聰史

近年、日本は様々な自然災害に見舞われ、甚大な被害が出ている。

2016年4月に発生した熊本地震では熊本県と大分県を中心に住宅の倒壊や土砂崩れの発生により、多大な被害が確認されている。

更に、直近では多数の台風が発生し、北海道や東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。道路が寸断され、村落が孤立し、複数の川で氾濫や橋の崩落が相次いでいる。

これに伴い、企業活動においても、食品メーカーの工場が被災するなど重要な事業の中断を余儀なくされている。

サプライチェーンを構成する一企業が自然災害により操業が中断すると、サプライチェーン全体が停止してしまうという事態に陥る。

このように、事業、業務・サービス活動が中断される度に、製品・サービスの供給が停止すると、その影響の大きさによっては、顧客の喪失、今後の事業活動の中止・撤退と企業にとって事業継続が行えない最悪の状況になる可能性がある。

そのような中で今改めて、事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)、事業継続マネジメント(BCM: Business Continuity Management)が注目されている。

BCPとは、潜在化しているリスクによる損失と重要業務に対する影響度合いを事前に分析し、その分析に応じた対策の検討と導入を行うことで、リスクが顕在化した際に事業継続を確実にするための各種の手続きを文書化した計画である。

BCP策定では、まず自社の業務継続の阻害要因となるリスクを抽出し、各々について具体的に重要業務に与える影響度合いを分析する。そして、重要業務を緊急事態発生時においても、最低限のサービスレベルを確保する。または、目標復旧時間(RTO: Recovery Time Objective)内に重要業務を目標サービスレベルまで復旧させ、緊急事態発生に伴うリスクを最低限にするために、平時から事前に準備しておく計画であり、優先的に維持・復旧すべき重要業務を定め、各人員や組織が取るべき行動を文書化する。

BCP策定や維持・改善、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平時からのマネジメント活動は、事業継続マネジメント(BCM : Business Continuity Management)と呼ばれ、経営レベルの戦略的活動として位置付けられるものである。

BCMは、地震等の自然災害へのリスク対策に相当し、被害を最小限度にし、事業活動を早期に復旧させる重要な活動であり、企業経営の根幹とも言える。従って、企業経営者は、BCMに対し、ヒト、モノ、カネを十分投入し、自然災害の脅威に対し企業が早期に対応できる経営基盤を整備しておくべきである。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。