なぜアメリカの法人税率は高いままなのだろうか

2016年2月24日

  • ニューヨークリサーチセンター シニアエコノミスト 土屋 貴裕

州によって異なるが、アメリカの法人税は主要国で最も高い。アメリカの企業が高い法人税を嫌って、合併などを通じて税率の低い国に登記上の本社を移す、「コーポレート・インバージョン」問題がしばしば話題になり、批判の対象となっている。2012年の大統領選では、オバマ大統領も共和党のロムニー候補もそろって法人税率の引き下げを訴えたにもかかわらず、法人税率は引き下げられていない。減税の財源をどこに求めるかが民主党と共和党で異なることで議論は進まないとされる。また、世界最大の経済大国は、企業にとって法人税率が高くても常に一定の魅力がある国ということもあろう。

何気なく開いた雑誌に、「活躍する20歳以下」という特集があった。世界に名だたる大企業に成長させたという成功者の話ではなく、ニューヨーク近郊における現在の9歳から19歳の子供たちの記事である。カメラマンやダンサー、DJといった芸術系、地域コミュニティのまとめ役、いじめられた子供とメンターを結び付けるNPOやアフリカの子供教育費支援のNPO運営、ITエンジニアなどが紹介されていた。だが、やはり多いのは会社を興した若き起業家たちの話題であった。例えば、介護用品、スニーカーの売買、ベビーシッターの紹介サイト、ポートフォリオマネージャーなどである。

アメリカの社会においては、独立の気風が重んじられ、起業は賞賛されるという。起業は技術革新と経済の新陳代謝を促し、経済の活力源となる。企業誘致は主に州または地方政府の役割であるが、既存の企業を誘致するのみならず、起業をサポートする窓口が設けられている。だが、彼らの企業は法人税を払っているのだろうか。

コーポレート・インバージョン問題が批判される一方、赤字企業が税金を払わないことへの批判はないように思われる。特にスタートアップ企業は十分な利益を稼ぐことは困難であり、税率がどうであれ税金を納めることは難しいだろう。若い企業は税金を気にすることなく、成長する(と起業家が思っている)分野に投資することができる。成功したり失敗したりして、いずれ黒字が出るようになったら、税金を納めてもらうのだ。そこで海外に税金の納付先を変えることはアンフェアであり、批判の対象となる。アメリカの法人税率が高いのは、黒字企業の負担で試行錯誤を繰り返す挑戦者を増やし、成長分野に資金を振り向ける仕組みでもあるのだろう。

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