楽器の値段

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2016年02月12日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

先週、ギターを購入した。ふだんギターを弾くわけではないのだが、学生の頃譲ってもらったY社のフォークギターはさすがにくたびれてきていて修理に出すと結構高くつくので、この際、良いものを一台と思って購入した。昔からのあこがれのM社のD型をと思って探していたら、1950~60年代のものが数台、御茶の水の楽器店に買える値段で出ている。友人のギター弾きに試奏してもらい、これはというものを選んでもらった。新品もなかなかよかったが、中古楽器にはそれなりの味わいがある。委託販売だそうなので、楽器店は販売手数料を取るだけで、代金のほとんどはきちんと売主に払われる仕組みだ。

他の種類の中古ギターも見て回ったのだが、ちゃんと相場というものが形成されている。御茶の水は、楽器店が集積していて弾き比べが簡単に行えるといった条件が揃っているので、「標準」も形成されやすいのだろう。売りに出ている楽器は、同じモデルで似たような年代のものでも、個々に違いがあるのだが、長所、短所をうまく反映した価格付けがされているものだと感心した。掘り出し物を見つけるのは相当に困難で、良いものはやっぱり高い。インターネットでのオークションの発達なども影響していて、M社の本国である米国での価格もかなり参考にされているらしい。

とはいっても、金融商品とは違い米国との間で簡単に裁定取引ができるわけではなく、現在は日本の相場の方がいくらか割安になっているようだ。だからといって米国で売ろうとしても輸送費などがかかってしまうので、必ずしも有利になるわけでもないようである。また、ワシントン条約で貿易が規制されている材料、例えばブラジル産のハカランダという材が使われている場合があり、そうした楽器は国境を越えるのは難しいという問題もあるとのこと。

ギターに限らず、中古としてそれなりの値段がつくような楽器の場合、値段はある程度高くてもメンテナンスをちゃんとすると価値を維持することが可能だ。私が購入した楽器も一般的なインフレを考慮しても元の値段を維持している。ということは、弾いて楽しむフローのコストは消耗品である弦などや時々の調整費用であって、意外に小さいということになる。投機目的で楽器を買うことはお勧めできないが、ちゃんと弾くなら利用価値があって長期的に価値が変わらないようなものを選ぶことが大切なのだろう。中古楽器を素人が安心して売買できるようになったのは、市場という仕組みのおかげか。

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