2016年、誰がリスクを取りにいく?

2016年1月13日

年初の金融資本市場では、中国の景況不安に地政学リスクの高まりが加わり、全世界的にリスク・オフが加速した。米国の利上げ継続が見込まれる今年、リスクを積極的に取りに行く主体はあるのか、その動向は市場のみならず、世界経済にも大きく影響するだろう。

過去10年、グローバル市場でリスクの取り手は次第に変わってきた。リーマン・ショックの後、財政出動により政府がリスクを取り、その後を継いで中央銀行が量的緩和でリスクを一手に引き受ける格好となった。ただ、中央銀行のリスクテイクは、そろそろ限界に達してきた。また、リーマン・ショック前に大きなリスクを取っていた銀行部門は、金融規制強化ですでにリスクを取れない状態である。では次の引き受け手はと言えば、“ファンド”とされる。しかも、いわゆる高リスクとされるようなヘッジファンドではなく、一般に取引できる投資信託やETFに広く分散されているようだ。最終的には世界中の個人や金融機関が薄く広く引き受ける形になっている。このため、ショックに対しては比較的強いかもしれないが、顔が見えにくいのが事実だ。

一方、日本の株式市場でリスクを取りに行くのは誰か。昨年の状況を、主体別株式売買差額(2市場、東京証券取引所調べ)からみると、アベノミクスの上昇相場で主役を演じた外国人は7年ぶりに売り越し(▲0.3兆円)に転じた。反面、買い主体の筆頭は事業法人(+3.0兆円)である。もっとも、これは自社株買いの結果で、リスクを取りに行ったものとは言えない。リスクを取りに行った主体として目立ったのは、信託銀行(+2.0兆円)のみであり、背景には公的年金の株式ウェイト引上げがあった。片や、個人投資家は売り越し(▲5.0兆円)基調が続き、投資信託もわずかな買い越し(+0.2兆円)にとどまった。

昨年、リスクを取りに行った主体がいかに少なかったか。今年も、原油価格の低迷継続が懸念される中、オイルマネーなどを源泉とする外国人の買いは盛り上がらない可能性がある。一方、軟調相場の中では、年金の買い余力が増すことや、逆張りで個人のビヘイビアが変わる期待はあるが、強力なリスクの引き受け手が見当たらない状況が続く可能性もあろう。

少し視点が変わるが、今年の日本経済にとっては、こうした市場で取られるリスクのみならず、いわゆる「事業リスク」が取られるか否かが重要だ。ここ数年、日本企業は内部留保をため込んで、経済成長に資する設備投資を十分に行ってこなかったと批判されてきた。もっとも、事業投資という意味では、企業買収(M&A)が積極的に行われている。とくに日本企業による海外企業の買収金額については、昨年10.6兆円(公表ベース、トムソン・ロイター調べ)にのぼり、史上最高額を更新した。

事業でのリスクテイクは企業収益の源泉であり、それは企業価値の変化を通じて市場に反映される。市場におけるリスクの取り手は見えづらいが、本質的には、企業がリスクを取るかどうかが最大の鍵と言えるのかもしれない。

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