訪日旅行客増加の経済効果はアベノミクス次第

2015年7月7日

  • パブリック・ポリシー・チーム エコノミスト 神田 慶司

ドル円レートはこの3年間でおよそ40円も下落した。大幅な円安の効果が顕著に表れたものの1つは訪日旅行客数であろう。2012年の訪日旅行客数は836万人だったが、2014年には1,341万人へ増加し、2015年に入っても増勢を維持している。海外から訪れる人が増えれば、国内消費額の増加による経済活性化が期待できる。

図で示したように、訪日旅行客の実質消費額は第2次安倍内閣が発足した2012年10-12月期から2015年1-3月期の間に年率換算で1.4兆円増加した。訪日旅行客によるモノやサービスの購入は国内家計最終消費ではあるが、GDPの需要項目の1つであり居住者を対象とする家計最終消費には含まれず、GDP統計上は輸出に含まれる。従って、非居住者家計の日本国内での消費額の増加は、外需の拡大としてGDPに表れている。

訪日旅行客の増加がもたらす経済効果はそれだけではない。例えば、訪日旅行客の増加は、彼らにモノやサービスを提供した企業の利益を拡大させる。企業の利益が拡大すれば経営状況が改善して設備投資や雇用を増やすケースが出てくるだろう。また、そこで働く人々の所得の改善に繋がれば、増加した所得は新たな家計消費に回る可能性がある。他方、国内で訪日旅行客にモノが売れるようになったとしても、その製品が海外で生産されている場合には輸入が増加することになり、国内生産の拡大にはつながらないだろう。

このように、トータルとしての経済効果は、訪日旅行客にモノやサービスを提供した家計や企業の次の経済行動に大きく左右される。家計や企業が消費や投資を積極的に増やすのであれば、経済効果は訪日旅行客の消費増加額を大幅に上回るかもしれない。反対に、訪日旅行客の増加で国民所得が多少増えたとしても、家計や企業の預貯金に回ってしまうのであれば、経済効果は訪日旅行客の消費増加額とさほど変わらないことも考えられる。

その意味で、家計や企業が消費や投資を増やそうとする経済環境を整備することは重要であり、訪日旅行客の増加の効果をどれだけ高められるかは、デフレ脱却・経済再生を目指す安倍内閣の取組み次第である。政府は6月30日に「経済財政運営と改革の基本方針2015」(いわゆる骨太の方針)を閣議決定した。成長力強化と財政健全化という長年の課題に確かな道筋をつけ、家計や企業のマインドを前向きに変えられるか、その実効性が注目される。

訪日旅行客数と実質消費額

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