高齢化を前向きに

2015年6月8日

日本をはじめとして、多くの先進国では人口の高齢化は大きな課題の一つである。欧州においても、平均余命の伸びに伴う年金、医療や介護など公共サービスの維持が課題として挙げられており、その対応として、年金制度改革などが行われている。

こうした人口の高齢化に関する問題では、様々な調査や統計作成が行われているが、国連欧州経済委員会と欧州委員会では「アクティブエイジング指数(※1)」として、高齢者がどれだけ社会に関わっているか、また社会がどれだけ高齢化に対応しているかを示す指標を公表している。

そもそも欧州におけるアクティブエイジングは、国連における加齢対策10周年を機会に、2012年をアクティブエイジングイヤーとして「世代間の連帯と活力ある高齢化の推進」がEU全体で実施されたことが大きなきっかけとなっている。

アクティブエイジングとは、年齢を重ねても可能な限り長く自分の生活に責任を負い、経済・社会に貢献すると共に、世代間の理解を促進し若者が高齢者を支えるというだけでなく、共に支え合う社会をつくることを目的とした活動である。EUでは、高齢者の雇用促進や教育訓練、高齢者向け社会インフラの整備、健康促進と貧困削減などが具体的な取り組みの中心とされ、生活の質の向上を通じ、2020年までに健康寿命を2年延ばすことを目指している。

こうした各国の取り組みの成果について、アクティブエイジング指数では、「雇用」「社会への参加」「自立し、健康で安全な生活」「アクティブエイジングの受け入れ環境」の4項目について評価している。2014年の公表結果によると、スウェーデンの1位をはじめとして、デンマーク、フィンランドといった高福祉国家として知られる北欧の国々やオランダが上位に並んでいる。スウェーデンでは特に高齢者の就業率が高い割合にある他、デンマークやオランダでは自立した生活の項目で高いスコアとなっている。一方、社会への参加については、アイルランドやイタリアがボランティア参加や家族のケアといった点から上位を獲得している。こうしたアクティブエイジングに取り組む国々がある一方、ギリシャや中・東欧諸国は全体的に低いスコアにあり、EU内でも国ごとの対応や取り組みに差が見られる他、雇用を中心に男女間での格差が存在しており女性のスコアが男性より低い点など、今後も取り組むべき課題が見てとれる。

EUではアクティブエイジングを社会変革として捉えており、この取り組みを通じて若者と高齢者がお互いに支え合う社会を目指している。国民全体の意識変革はすぐに成果が表れるものではないだろうが、自立した高齢者が社会に積極的に関わることで、年齢を重ねることへのポジティブな評価が浸透し、社会の活力につながっていく効果は大きいと思われる。高齢化の進展については、その課題の面からネガティブな面が強調されがちであるが、日本においてもこうした意識改革によって、長寿が本来の意味通りの前向きな意味で扱われるようになることが必要ではないだろうか。

(※1)国連欧州経済委員会ウェブサイト

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