GDP統計の情報拡充をどう活かすか

民間エコノミストの視点から

2015年5月25日

  • エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 久後 翔太郎

先日、2015年1-3月期のGDP統計が発表された。普段であればヘッドラインの数値や内容についての問い合わせがほとんどであるが、今回は新たな試みとしてこれまで公表されていなかった情報がいくつか公表されたことについても感想を求められることが多かった。具体的には、①民間在庫品増加の内訳項目の季節調整値(※1)と、②設備投資の需要側推計値と供給側推計値の名目原系列の前期比である。新たに公開された情報をどのように活かすことができるかはユーザーによって異なるであろうが、民間エコノミストに求められる役割の1つは、より正確なQE予測であろう。そこで新たに公開された情報をQE予測の実務でどのように活かすことができるかを簡単に解説したい。

①民間在庫品増加の内訳項目については、1次QE予測と2次QE予測で注目する項目が異なる。1次QE段階では原材料在庫と仕掛品在庫に仮置き値が用いられることから(※2)、1次QE予測で必要となるのは製品在庫と流通在庫である。流通在庫は基礎統計である商業動態統計との連動性があまり高くないことからより精密な加工が必要となるが、製品在庫は基礎統計である鉱工業在庫との連動性があり、同指標を用いることで予測の精度を上げることが可能になりそうだ。一方、2次QE段階では、原材料在庫と仕掛品在庫が仮置き値からどの程度改訂されるかが予測の主眼となる。法人企業統計の該当する項目と今回公表された原材料在庫と仕掛品在庫を比較することで、2次QEでの民間在庫品増加の修正を当てやすくなる可能性がある。

②設備投資の需要側推計値と供給側推計値の前期比については、主に2次QE予測で必要となる。GDP速報では出荷統計などを用いた供給側推計値と法人企業統計を基礎統計とした需要側推計との加重平均値により設備投資が求められる。このうち、1次QE段階では需要側推計値は仮置き値が用いられる。一方、2次QEでの設備投資は、法人企業統計を反映し、需要側推計値が確定する。このため、法人企業統計における設備投資の前期比と1次QE段階で公表されている需要側仮置き値の前期比を比較することで、2次QE予測の精度を上げることができる可能性がある(※3)

以上のように今回の情報公開によりQE予測の精度を高めることができると考える。しかし、依然として公表されていないデータも多い。例えば、当該四半期の民間在庫品増加の名目・実質の原系列や、個人消費の需要側・供給側推計値といった項目は公表されておらず、推計方法にブラックボックス的な部分が残るため再現が難しい。今後は、今回の取り組みを推し進める形で、内閣府にはより一層積極的な情報公開を求めたい。

(参考資料)
内閣府(2012、2015一部改訂)「推計手法解説書(四半期別GDP速報(QE)編)平成17年基準版」

(※1)なお、民間在庫品増加の内訳項目は確報段階で名目・実質双方の原系列はこれまでも公表されていた。加えて、季節調整のスペックも公表されていることから、やや古いデータであれば季節調整系列はこれまでも概ね再現可能であった。
(※2)2次QEが公表された段階で翌四半期の仮置き値が公表される。
(※3)ただし、公表されているのが直近四半期分のみであり、どの程度精度を上げることができるかを評価するにはデータの蓄積を待つ必要がある。

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