ちょっと気になるマイナンバー

2015年4月15日

マイナンバーに関する内閣府の世論調査(※1)では、マイナンバー制度を「内容は知らなかったが,言葉は聞いたことがある」と回答した人の割合が一番多くて43.0%、次いで「知らなかった」が28.6%と、未だ7割以上の人が実質的に知らない状況にある。一方、この調査では、知らない人も含め同制度における個人情報の取扱いについて不安があると回答した人が約83%を占め(※2)、概ね、調査時に示した9つの対応策が必要であると回答している(下図表)。実は、これらの対応策は、同制度では全て法律や仕組みで手当てされている。

手当てされているとはいうものの、筆者には「マイナンバーのみでの本人確認の禁止」について、気になることがある。2015年10月からは、マイナンバー(12桁の個人番号)や氏名、住所などが掲載された写真のない「通知カード」が配布される。2016年1月以降は、通知カードとともに送付される申請書を郵送するなどして、写真付きの「個人番号カード」に変更することができる。個人番号カードにはICチップが付いており、表面には氏名、住所、生年月日、性別と顔写真、裏面にマイナンバーが記載される予定である。政府は、この個人番号カードは本人確認のための身分証明書として使えるということをメリットの一つに謳っている(※3)。一方、マイナンバー自体は、社会保障、税、災害対策の分野の法律や条例で定められた“事務”以外で提供を求めてはいけないことが、マイナンバー法(※4)に明記されている(※5)。これは「データマッチングのキーとして不当に用いられることで個人の権利利益が侵害されるおそれがある」(※6)ためであり、マーケティング目的の顧客の名寄せや、過去の米国や韓国で問題になった他人の社会保障番号の悪用などを、防止することが目的である。そのためマイナンバーは、本人確認の時に見えないようカードの裏面に記載される。例えば、レンタル店などの会員になるための本人確認時に免許証を提示すると、免許証の番号を控えられたり、コピーを取られたりすることがあるが、マイナンバーで同様のことを行うのは禁止されているのである。

ただし、今後、マイナンバー利用範囲の拡大について検討されることになっている(※7)。例えば、ペイオフ対応のため預貯金口座への付番などの改正案が国会に提出されている(※8)。この改正案が通れば、銀行は預金者にマイナンバーの告知を求めることになるが、預金者には銀行に対する告知義務はない(マイナンバーを見せなくても良い)。このように利用範囲の拡大のためにマイナンバーを使う“事務”を列挙した法律や条例が変わると、マイナンバーを見せなくてはいけない場合、見せなくても良い場合、見せてはいけない場合が変化することになる。行政の効率化、国民の利便性向上、社会福祉に資するマイナンバー利用範囲の拡大は必要とは思うものの、そうした法律や条例をいちいち確認するのは面倒と感じる筆者の、ちょっと気になるマイナンバーである。

(※1)内閣府 「マイナンバー(社会保障・税番号)制度に関する世論調査」(平成27年1月)
(※2)「国による個人情報の一元管理で監視、監督されるおそれ」、「個人情報の漏えいによるプライバシーの侵害」、「マイナンバーや個人情報の不正利用による被害のおそれ」、「その他」、「特にない」、「わからない」の選択肢で、「特にない」、「わからない」を除く回答者の割合。
(※3)内閣官房 「マイナちゃんのマイナンバー解説」
(※4)「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の第15条
(※5)法人の場合は13桁の法人番号が付されるが、第15条の対象は個人番号だけである。
(※6)内閣府大臣官房番号制度担当室 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 【逐条解説】」p.33(2015年3月31日閲覧)
(※7)「民間利用については、法律施行後3年をめどに、その段階での法律の施行状況等をみながら、検討を加えたうえで、必要があると認めた場合には、国民の皆様の理解を得ながら、所要の措置を講じる」とされている。(内閣官房 「よくある質問(FAQ)」の「Q7-1 民間利用の話も出ていますが、どうなりますか?」)(2015年3月31日閲覧)
(※8)金融機関が破綻した時のペイオフにおいて、預貯金を合算する(口座の名寄せ)時にマイナンバーを使えるようにするためであり、その改正案が、2015年3月10日の国会に提出された。

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