お金を貯め込んでいる企業とは?

2015年4月14日

「企業はお金を貯め込んでいる」という声をよく耳にする。財務省の法人企業統計を見てみると、企業部門全体が保有する現預金は2013年度の実績で174.4兆円であった(※1)。10年前の2003年度は129.1兆円だったので、45.4兆円増加していることになる。手元流動性(現預金に短期保有目的の有価証券を加えたもの)に範囲を広げてみると2013年度の残高が200.8兆円、2003年度の残高が140.5兆円なので、60.2兆円の増加である。

確かに、金額の増加額だけ聞くとお金を貯め込んできた印象を受けるが、この間、総資産自体が296.6兆円増加しているので、手元流動資性が総資産に占める割合は、2013年度で13.1%と、2003年度の11.4%から1.7%ptの微上昇にとどまる。むしろ増加が顕著なのは投資有価証券で、2003年度から2013年度の間に139.1兆円増加している。これは企業が海外展開(対外直接投資)を積極化させていることが大きく影響しているものとみられる(総資産に対する割合は9.7%から16.9%に上昇)。

「企業はお金を貯め込んでいる」、というと、現金保有や預金を積極的に増やしている印象を受けるが、この議論が起きているのは、企業の利益剰余金(内部留保)の水準が高いことが一因となっているようだ。利益剰余金は2013年度の残高が328.0兆円と、2003年度の185.3兆円から142.6兆円増えた。総資本に占める割合も15.1%から21.5%に上昇している。

企業が本業で稼いだ利益(当期利益)は、一部が株主配当や役員への賞与などに充てられ、残った分は翌年度以降の事業活動資金に充当されることになる。これが内部留保といわれるもので、会計年度ごとに発生する。会計年度ごとに発生した内部留保が積み重なったものが貸借対照表上の利益剰余金ということになる。利益剰余金は、銀行借入れや社債・株式の発行等で調達した資金と同様、運転資金に充当されたり、新しい設備の購入に使われたり、研究開発に充てられたりする。

利益剰余金は純資産の部に計上されていることからもわかるとおり、株主に帰属する資産である。本来、株主が投資先企業に対して期待するのは、利益剰余金を原資に設備投資等を積極的に行い、収益性を高めることや、株主還元を増やすことであるが、例えばTOPIX500採用銘柄の利益剰余金比率(利益剰余金が総資本に占める割合)と手元流動性比率(現預金と短期保有目的有価証券が総資産に占める割合)を分析したところ、利益剰余金比率が高い企業ほど、手元流動性比率も高い傾向が確認できた(※2)

現預金の保有は高い収益性を見込めず、短期保有目的有価証券は基本的に本業と関係がない資産である。「利益剰余金が高水準に積み上がっているが、有効に使われているのだろうか」という投資家の疑問が、「企業はお金を貯め込んでいる」という声につながっているのではないか。

ただし、上場企業といっても、利益剰余金比率や手元流動性比率が低い企業も多い。さらに、中小型株といわれる銘柄(東証第2部やマザーズ市場に上場する企業など)に関しては利益剰余金比率と手元流動性比率の間に相関関係は確認できず、そもそも利益剰余金がマイナスである企業も少なくなかった。全ての企業が「お金を貯め込んでいる」というわけではないのが現状だ。

(※1)本文中は全て全規模・全産業(金融業・保険業を除く)の数値である。
(※2)2014年中に公表された有価証券報告書に基づく。

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