「空き家」対策は成長戦略?

2015年1月23日

最近、「空き家」問題への関心が高まっている。昨年11月には、いわゆる「空き家対策特別措置法」が成立、税制面の対応も予定され、今年は空き家対策元年と言っても過言ではない。一般には、地方や郊外における人口減少を如実に反映する社会問題として捉えられているが、この取り組みは、ある意味、立派な成長戦略と見ることもできる。

総務省の調査によれば2013年10月時点の全国の空き家は820万戸と20年前に比べて約8割増加した。住宅の総数に対する空き家率は13.5%で上昇傾向が続いている。このうち、賃貸用や売却用物件、あるいは別荘など一定の管理がなされる住宅を除いた「その他空き家」は318万戸となるが、その数は20年間で倍以上に膨らんでいる。

空き家増加の問題点は様々指摘されているが、治安の悪化や家屋倒壊の危険性増加、景観の悪化、それらを原因とする周辺地域の資産価値低下、といったところが挙げられよう。経済的な観点から言えば、やはり資産価値の低下が看過できない問題となる。

2013年末の家計の貸借対照表(内閣府「国民経済計算」)を見ると、住宅を中心とする固定資産の総額は348兆円、土地の総額は676兆円となっている。比較可能な1994年末に対して固定資産はほぼ横ばい、土地は4割減となった。一方、この間、家計保有の金融資産が4割増加した結果、家計資産に占める金融資産の割合は4割から6割に上昇し、逆に不動産を中心とした非金融資産が6割から4割に低下している。要は、かつて個人の財産の多くを占めていた不動産(いわばマイホーム)の価値が相対的に失われてきたということだ。

これまでの不動産の価値低下をすべて空き家のせいにするつもりはないが、このまま放置される空き家が増えて土地の有効活用がなされなければ、不動産価値の下落が広範に進み、個人にとってマイホームの資産価値が失われるばかりか、マクロ経済にとっても見逃すことのできない問題となる懸念が生じよう。価値の下落が意味するところは、すなわちその不動産が生み出す将来価値の減少に他ならない。極論すれば、不動産の生産性が低下し、日本の持続的成長を阻む問題の一つとなりかねない。

足もとでは都市圏への人口流入や投資資金の集中により、都市圏における不動産市況は好調を維持している。しかし、その背後で不動産の生産性低下が広く進んでいる可能性がある。日本では、とかく土地などの財産に対する権利意識が強いが、権利の裏には義務があることを改めて認識すべきだろう。「放置しない」ことは公共に対する義務と言えるのではないか。

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