2015年に向けたアベノミクスの課題

2014年12月30日

  • エコノミック・インテリジェンス・チーム 執行役員 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

2014年12月14日に実施された衆院選で、自民・公明両党は前回と並ぶ合計325議席(追加公認は含まず)を獲得し、衆院で法案の再可決が可能になる3分の2の議席(317議席)を確保した。

今回の衆院選における最大の争点は安倍政権の経済政策(アベノミクス)の是非であったが、筆者はアベノミクスの基本的な方向性は正しいと考えている。日本経済は着実に改善しており、デフレ脱却に向かっている。

今後はアベノミクスの一定の成果を認めた上で、足らざる部分を補強していく建設的な議論が必要だ。

現時点ではアベノミクスの三本の矢の中で、「第一の矢(金融政策)」に過度な負担が集中しており、国民の痛みを伴う構造改革は遅れている。今後は、「ポピュリズム」的な風潮に流されることなく、「国民の痛みを伴う構造改革」を断行することが、最大の課題となる。

第一に、社会保障制度の抜本的な改革などを通じて財政規律を維持する必要がある。

日銀が大胆な金融緩和を継続するには、財政規律の維持が前提条件となる。現状わが国は、政府の財政赤字を国債の発行で穴埋めし、国債の大宗を日銀が購入することで何とか国債市場の安定を保っている。しかし、日銀の量的・質的金融緩和が諸外国から「マネタイゼーション(政府の債務を中央銀行が肩代わりすること)」だと受け止められると金融緩和は効かなくなってしまう。もし財政規律が失われて、日本国債に対するグローバルな金融市場での信認が崩れてしまうと、わが国には有効な政策手段が全く残されていない点が最大の問題なのだ。最悪のケースでは、円だけでなく株や債券も売られる「トリプル安」になり、まさに台風や嵐の状況になりかねない。

第二に、農業、医療・介護、労働といった分野における、いわゆる「岩盤規制」を緩和するなど、「第三の矢(成長戦略)」を強化することが不可欠である。

2014年6月に閣議決定された、新成長戦略のメニューを見ると、従来わが国で「タブー」とさえ考えられてきた問題が意欲的に取り上げられている。

しかしながら、改革の中身に関する議論はこれからだ。「悪魔は細部に宿る」という言葉があるが、改革を骨抜きにしないことが肝要である。

最大のポイントは、全てのメニューについて、「この一線を越えたら、骨抜きになる(改革の名には値しない)」という境界線(ボトムライン)を明確化し、この一線を断固として守り抜くことだ。

例えば、農協の組織改革における最大の論点は「上部団体である『全中』を衣替えする新たな組織に対して、地域農協に対する指導権と監査権を引き続き与えるか否か」である。もし新組織に指導権と監査権を与え続けるのであれば、それは「看板の掛け替え」にすぎない。

国民にとって耳の痛い改革を正面から断行することができるか否か――衆院選で大勝した今こそ、安倍政権の真価が問われている。

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