原油価格という「地代」の低下

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2014年12月19日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

原油価格が大きく低下している。WTIが1バレル55ドルというのは、2009年5月以来の水準である。この時はリーマン・ショックを受けて一時的に暴落したが、2010年には80ドル台へと回復した。それ以前に55ドル水準だったのは2005年の半ばで、2002年から2008年にかけての上昇期の中途であった。原油価格を米国の生産者価格でデフレートした相対価格でみると、新興国の経済成長の加速が始まるあたりの2000年代初頭の原油価格に相当する現在の価格は40ドル程度ということになる。実際の価格がそのあたりまで低下してくると世界経済を再加速させる要因となってくるだろう。

もともと原油価格の動きは大きく、モノの価格のようでいてそうではない性格も強いのではないかと思われる。原油価格の動きが大きくなったニクソン・ショック以降を振り返ってみると、まず、OPECを結成した産油国が目指したのは、ドル価値の低下を補うような原油価格の上昇だった。第二次オイルショック(80年頃)までの原油価格変化をみると、金価格の上昇との比例的な値上がりという姿があった。つまり、産油国はドルではなく金での支払いを事実上求めていたのかもしれない。またドル価値が継続的に大幅に下がっていくような過程だったので、産油国のカルテルも強く価格上昇を実現できた、という事情があったのだろう。

もともと原油など天然資源の価格は、一般のモノの価格形成とは異なった原理で価格形成がされる。製造業の製品や多くのサービスのように需給が均衡してくると平均コスト+平均利潤に価格が収斂してくるというような原理では決まらない。採掘コストが一様ではないので、安い方から並べて需給が一致してくるところまでの、もっともコストが高くなるところが基準になって価格が成立する。ということは、その他の多くの採掘地では超過的な利潤が発生することになる。まして原油の場合、カルテルでそれよりも高い価格を実現しようとしているので、原油代金というのはそのほとんどがいわば超過利潤のかたまりと言えなくもない。それは消費国が産油国に払う地代と表現してもよい。消費国における付加価値の一部を分配しているようなものだ。

原油価格が下がることはその分地代が安くなって、消費国から産油国への所得移転が少なくなる。燃料費の低下は消費者の家計にもプラスだし、産業の収益性を高め投資活動も刺激するので、世界の経済成長には必ずプラスになると言える。産油国、特にロシアのような国際収支に余裕のない産油国には打撃になることは確かなのだが、これは主に金融問題であり、対処を怠らなければ一過性のネガティブ要因でしかない。多少のタイムラグは出てくるかもしれないが、原油価格下落は世界経済には必ずプラスに作用してくると考えてよい。

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