ニューヨークの起業と移民・女性

2014年11月12日

  • ニューヨークリサーチセンター シニアエコノミスト 土屋 貴裕

起業を促すために、ニューヨークをはじめ、アメリカでは中小企業向けの、しかもスタートアップする前の段階から、ある程度企業が軌道に乗るまでをサポートするプログラムを用意している。中小企業サービス課とでもいうべきスモール・ビジネス・サービスの部署があり、ビジネスプランのアドバイスやセミナー、ビジネスに必要な基本的なスキルを身に付けるコースの設置、契約書やリースなどの法律面でのアドバイス、製品、サービス供給に必要な法律知識や、証明書の取得方法のアドバイス、求職者の紹介、補助金の取得方法のアドバイスなどを行っている。日本では、女性の有業率を高め、地方での起業を促進することを目指しているが、以下では、ニューヨークでスモール・ビジネスを営む方に聞いた話を紹介したい。

ニューヨークでは、人種的にマイノリティである女性の起業家を優遇し、育成しようというプログラムを持っている。マイノリティであることと、女性であることが揃っていることが条件である。市が購買するモノやサービスに対する入札に参加すると、一定の枠がマイノリティの女性のビジネスに割り当てられていて落札でき、それを繰り返すことでビジネスを一気に拡大するチャンスが得られることになる。市が融資するようなインキュベーション型ではないが、融資をする銀行も紹介してくれるし、安い事務所スペースを借りられるような紹介もしてくれるそうだ。

また新興国からの進出企業、女性に限らずマイノリティの市民を優遇するため、その会社に対して、「あなたの会社はマイノリティで女性である社長が運営する会社であること」を認定する。機会を平等に提供し、門戸を開いている姿勢を示すことを制度化している。日本では1円資本金の会社を認めるなど、会社設立のハードルを引き下げたが、アメリカでは、海外から来ても、外国籍であっても比較的簡単に起業ができるということだ。法人税収がすぐに増えるとは限らないが、雇用が増えて消費が拡大すれば、消費税に相当する州や自治体が課すセールスタックスも増えることになる。

労働人口の減少を補うため、日本でも移民を受け入れる論議があるが、外国から働きに来ることは何かと敷居が高い。特区の設立、優遇税制もさることながら、他国からの投資を促す補助金だけでなく、従来なら制度的に日本に入って来にくい、外国籍の小規模事業者に対しても、外国語で具体的なビジネス・サポートサービス体制を行政が整えるという政策も日本のヒントにはならないだろうか。女性ならでは、外国人ならではのアイデアを持つ起業家が、新たな付加価値を生み出すという選択肢もあるということになる。訪日外国人の増加が期待されている今こそ、こうした議論も俎上に載せる機会かもしれない。

(参考)NYC Small Business Services “Selling to Government”

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