国土強靱化、地方創生を実現できる「転都」

2014年9月2日

昨年(2013年)末にいわゆる「国土強靱化基本法」が成立し、本年6月には「国土強靱化基本計画」などが閣議決定された。一方、日本創成会議が5月に公表した推計により「消滅可能性都市」といった概念がセンセーショナルに取り上げられたこともあり、政府は地方創生と人口減少克服に向けた「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げるとのことである。それとは別に国土交通省は「国土のグランドデザイン2050」を7月に発表した。それぞれの焦点は異なるものの、いずれもわが国の今後の国土構造や都市と地方のあり方に関わるものである。

人口減少を踏まえた上で、社会経済の活力を維持しつつ、災害に対する強靱性を持った持続性の高い国土構造へと転換していくことが求められている。「国土のグランドデザイン2050」は、「コンパクト+ネットワーク」をキーワードに挙げており、人口減少、地方創生、国土強靱化などの課題に対応するための方向性を示している。ただし、東京が引き続き首都であることを前提にしているようである。しかし、首都直下地震の危険性を含め東京一極集中に伴うさまざまなリスクを考えると、首都をどうするかは改めて考える必要があろう。

1980年代から1990年代にかけて、東京一極集中の傾向に拍車がかかる中、1980年代後半のバブル景気に伴う地価高騰もあり、首都移転が本格的に議論された。東京一極集中の解決策として、「遷都」、「展都」、「分都」、「新都」などのアイデアが出され(※1)、展都については一部実現したとも考えられる(さいたま新都心、幕張新都心、横浜みなとみらい21)。

1992年には「国会等の移転に関する法律」が成立し、1999年には「国会等移転審議会」が首都機能移転候補として、「栃木・福島地域」、「岐阜・愛知地域」、「三重・畿央地域」を答申した(※2)。しかし、バブル崩壊に伴い地価が下落したことなどもあり、首都移転の議論は下火となってしまった。

確かに、東京の地価の異常な高騰については、今後はあまり心配ないかもしれないが、首都移転は国土構造の根幹に関わる問題であり、統治機構の本質とも深く関わる。地価の問題は解消されたとしても、東京が首都であることによるさまざまなリスクの根本が解消されたわけではない。

そうしたリスク解消や地方創生、国土強靱化などを実現する方策として「転都」を検討してみてはどうだろうか(※3)。現在の東京よりはコンパクトな首都機能を備えた都市を、各地域ブロックに建設し、それぞれを地域の政治、経済、文化の中心とし、情報発信機能を持たせる。「日本の首都は、これらの諸都市を定期的に移動する。二〇~三〇年おきに転都を行なえば、人心一新にきわめて有効だろう(中略)中央対地方の対立意識や優劣意識といったものの発生の恐れはない(※4)」と思われる。また、自然災害などにより首都が機能停止状態に陥った場合は、即座に「首都予備群のなかの一つに移動(※5)」することができ、リスク対応力が高まるであろう。

人口が減少する中、コンパクトな首都が定期的に移動することによって、各地域の活力持続、文化力・情報発信力の強化、定期的なインフラ維持管理が実現でき、ひいては国土強靱化に資することになるであろう。資金的な問題については、まずコンパクトであることからして、それほどお金を掛けないことが前提となる。資金等について、さらに詳しく述べたいところであるが、長くなるので別の機会があれば論じてみたい。

(※1)遷都:首都機能を一括移転する新首都を建設。展都:関東一円に首都機能の一部を展開。分都:政治行政機能を全国各地に分散配置。新都:小さな政府とした上で、政治行政機構を「新都」に移転。詳細は、堺屋太一「『新都』建設」(文春文庫、1992年)を参照。
(※2)国会等移転審議会「国会等移転審議会答申」(平成11年12月20日)では、「移転先候補地として、北東地域の『栃木・福島地域』又は東海地域の『岐阜・愛知地域』を選定する」「『三重・畿央地域』は、他の地域にはない特徴を有しており、将来新たな高速交通網等が整備されることになれば、移転先候補地となる可能性がある」という表現になっているが、一般的にはこれらの三地域が候補地であると認識されていた。
(※3)「転都」のアイデアや意義は、佐治芳彦『世界最終文明と日本』(徳間書店、1997年)p.252による。
(※4)佐治芳彦『世界最終文明と日本』(徳間書店、1997年)p.252。なお、原文では「定期的」「転都」に傍点が付されている。
(※5)同上p.252-253

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