日本の家族形態の変化

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2014年08月21日

  • 木村 浩一

国立社会保障・人口問題研究所が2014年4月に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2010年の全国の総世帯5,184万世帯のうち、最も多い家族類型は家族1人の単独世帯となっている。その総数は1,678万世帯で、全世帯の32.4%を占めているが、2035年には、総世帯数が5,184万世帯から4,955万世帯に4%減少する中で、1,845万世帯(全世帯に占める割合 37.2%)に増える予測となっている。一方、一般的に標準世帯と考えられてきた夫婦と子から成る世帯は、2010年で1,447万世帯(同27.9%)、2035年には1,153万世帯(同23.3%)に減少すると予測されている。

税制、年金制度を始めとする我が国の制度は、夫婦と子を家族とする家族類型を前提として作られてきた。しかし、少子高齢化、晩婚化、非婚化など社会的変化が大きく、我が国の家族形態は単独世帯が中心になりつつある。

今後を見通しても、バブル崩壊後の長期の経済不振や非正規雇用の増加などによる低所得のため、家族を持たない、持てない若者が増えている。

また、高齢化により、今後、65歳以上の高齢者の単独世帯が大きく増加していく。その世帯数は、2010年の498万世帯から2035年には762万世帯に53%増え、全世帯の15.4%を占める。7世帯の内、1世帯は高齢者による単独世帯となることになる。例えば、東京都では、高齢者の単独世帯は、2010年の64万世帯から2035年には104万世帯に61%増加し、介護、医療など行政の大きな課題となってくる。そして、女性の単独世帯数の増加が大きく(2010年798万世帯→2035年930万世帯)、2030年以降、男性の単独世帯数を上回り、現在の年金制度の下では、女性の高齢単身者の生活の困難が予測される。

総人口が減少していく一方で、個人として生きる人々が増加していく。今後、現在の税制、年金制度や介護制度などの社会保障制度では、社会の変化に対応できなくなっていく。「伝統的な家族観」という従来の観点から離れ、日本社会の現実に即した制度設計の早急な見直しが必要だ。

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