中国の「人民元外交」と日本

2014年7月16日

人民元の国際化を巡る動きが活発化している。2014年に入ってからだけでも、①3月18日に行われた李克強首相とニュージーランドのキー首相の首脳会談に合わせて、人民元とニュージーランド・ドルの直接取引の開始が発表され、翌19日に銀行間外国為替市場で直接取引を開始、②3月22日~4月1日の習近平国家主席の欧州歴訪では、フランスに800億元のRQFII(域外機関投資家による中国国内人民元建て証券・金融投資)投資枠を付与。英国とドイツでは人民元決済に関する覚書が交わされ、人民元決済銀行を設立することを確認、③6月18日に中国人民銀行が人民元と英ポンドの直接取引を開始すると発表し、翌19日から実施。中国人民銀行は、中国建設銀行をロンドンにおける人民元決済銀行に指定(2013年10月に訪中した英オズボーン財務相と中国馬凱副首相との会談での合意事項)、④習近平国家主席の韓国公式訪問に合わせて、7月3日に中国人民銀行と韓国銀行(中央銀行)はソウルの人民元決済業務に関する覚書に調印。人民元とウォンの直接取引の開始、人民元決済銀行の指定(中国交通銀行)で合意し、800億元のRQFII投資枠を付与、⑤7月7日、ドイツのメルケル首相の訪中に合わせて、ドイツに800億元のRQFII投資枠の付与、など枚挙にいとまがない。

日本はこうした動きに先んじていたはずであった。2011年12月の日中首脳会談で、両国は金融協力の促進で合意。2012年6月1日には、東京と上海の銀行間外国為替市場で、円と人民元の直接取引が開始された。

しかし、その後の日中関係悪化により、人民元にかかわる日中政府間の取り組みは停滞している。例えば、日本政府による中国国債購入について、中国は2012年3月に650億元の運用枠を認可したが、現在に至るまで利用されていない。上海の外国為替取引センターでの円・人民元取引は、2012年1月~3月の77.2億元から、直接取引開始後の2012年7月~9月には3,398.0億元へと急増し、2013年1月~3月に3,774.2億元のピークを付けたが、その後は減少。2014年1月~3月は1,303.8億元にとどまった。前年同期比では65.5%の急減である。日本へのRQFIIの付与や人民元決済銀行の指定なども実現していない。

中国の「人民元外交」がますます活発化するなか、先陣を切ったはずの日本は大きく後れを取っている。4月下旬以降、中国の対日政策は、経済交流は積極的に活発化させ、さらに政治面でもトップ外交以外は推進する方針に転じたとの観測がある。しかし、人民元ビジネスはトップ外交の手土産と化しているのが現状である。状況の改善は難しい。

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