社会活動:女性に偏るもう一つの負担

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2014年07月14日

  • 矢澤 朋子

6月24日に閣議決定された成長戦略では「女性の活躍推進」が大きな柱の一つとなっている。これを阻害する要因として、共働きであっても是正されない重い女性の家事・育児負担を挙げているが、それ以外に見落とされている女性に偏る負担がある。それは「社会活動」である。

代表的なものでは、保育所・幼稚園・学校の行事手伝い、PTA活動、町(内)会や子供会などの自治会活動があり、担い手の多くは女性である。筆者自身も町会理事の役を担っているが、その他の理事さんにも女性が多い。PTAの役員決めでは「お父さんではなく、昼間に連絡が取れるお母さんにお願いしたい」と依頼されることもあるという。

総務省「平成23年社会生活基本調査」では、上記のような社会活動は、ボランティア活動のうち「子供を対象とした活動」と「安全な生活のための活動」に区分されている。夫婦と子供から成る共働き世帯(※1)の夫が、子供を対象とした活動に参加した率(行動者率)は、9.8%。対して妻は24.8%と圧倒的に妻の方が高い。夫婦と子供から成る専業主婦世帯と比べても、行動者率はほぼ変わらない。さらに末子の教育段階を「就学前」と「小学」で分けてみると、妻の行動者率は末子が「小学」になると著しく上昇している。

平成23年社会生活基本調査

子供が小学生になると参加機会が大きく増える「子供を対象とした活動」は、妻が専業主婦であることを前提とした組織・仕組みになっているため平日昼間に活動が行われることが多い。「学校や地域のボランティア活動に参加するのは、専業主婦の私たちばっかり!」という不満も聞かれるが、統計によるとそこまで大きな差はなく、仕事を持つ女性は仕事を休んで参加している。今や共働き世帯は61%(2012年)(※2)を占めるという現状に即し、これら社会活動の組織・仕組みを変えていくことが今後の課題と言えよう。英国や米国でもPTA活動が行われているが、役員の会合は昼間働いている保護者のため夜に開催されたり、一つの役職を複数の人で分担したり、保護者が可能な範囲で得意な/好きな分野を受け持ったりと、個人に負荷がかかりすぎないような工夫がされていることが多い(※3)。そうすれば、おのずと男性の参加率も高まってくると考えられる。

もちろんPTAに積極的に参加する男性もおり、自治会活動では地域で働く男性や定年後のシニア男性が中心となって活動を盛り立てていることも多い。しかし、社会活動は育児の一部と見なされているものも多いため、家事・育児と同様に女性の「役割」と捉えられがちである。そして、実際に女性に負担が偏っているのが統計にも表れている。子供や地域社会の安全維持・活性化を行うことは非常に重要である。だからこそ、性別、就業/未就業などの違いにかかわらず、誰もが参加しやすい仕組みにしていくべきであろう。

(※1)共働き世帯とは、夫婦ともに非農林業雇用者の世帯
(※2)共働き世帯比率は、「共働き世帯数+専業主婦世帯(夫が非農林業雇用者、妻が非労働力人口及び完全失業者)」に占める割合。(出所:総務省「平成24年就業構造基本調査」)
(※3)日本と英米の働き方の違い(日本ほど長時間労働ではないなど)や、PTAには学校や子供たちのための資金集めの役割もあることなども関連していると思われる。

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