「リーマン・ショック」はガラパゴス?

2014年5月14日

  • ニューヨークリサーチセンター シニアエコノミスト 土屋 貴裕

日本では、2008年9月に株価が急落し、世界の多くの経済が景気後退に陥った時点を「リーマン・ショック」と呼んで、その言葉を多用しているように思われる。だが、米国では「リーマン・ショック」という言葉はあまり使われていない。「金融危機(Financial Crisis)」あるいは「グレートリセッション(Great Recession)」という言葉の方がより一般的で、時期も「リーマン・ショック」よりも少し前の、「サブプライム・ローン問題」と呼ばれた時期が含まれているようだ。

「Financial Crisis(金融危機)」などでは、指し示す範囲が広すぎるようにも思えるのだが、世界的に「危機」や「ショック」と呼ばれる事象は、得てして資金繰りの問題が顕在化した時だった。ギリシャ国債の借り換えが困難になったこと、タイやメキシコなどで海外資本が借り換えに応じずに資金を引き揚げたことなどが想起される。

世界経済の相互依存関係が深化し、危機的な状況は他の市場に連鎖あるいは感染することがしばしば起きるようになった。連鎖的に資金繰りの問題に巻き込まれた方は、突然資金繰りが悪化した場合もあるだろうが、そもそも発端は、震源となった国において、資金繰りが厳しくなる経済環境があったはずである。2008年の秋、日本では資金繰りの問題はなかったにもかかわらず、海外からの投資資金の引き揚げ(投げ売り)によって、市場は混乱した。「リーマン・ショック」と呼ばれるようになったのは、自分が関係する領域に問題が及んだ時の状況が名前の由来なのであろう。同様に、1990年代の後半に「アジア通貨危機」が起きた後、IMFの資金支援に頼る状況に置かれた韓国では、「IMFショック」「IMF通貨危機」などと呼ばれたそうである。他の国の市場で生じた資金繰りの問題がグローバルに波及することは、経済的な規模が小さいギリシャの資金繰りが懸念されて注視されたように、各国の資金繰り状況を点検すべきことを意味する。

米国において、「金融危機」または「リーマン・ショック」で生じたような、資金繰りの問題が発生する可能性は低下したのだろうか?法人が短期で資金を調達する市場はいくつかあるが、やや詳細な統計が取れるCP(コマーシャルペーパー)市場では、米国以外の金融機関の資金調達が引き続き活発である。CPで調達した資金が向かう先はわからないが、米国外金融機関のCP調達額の動向と米国の株価の連動性は高い。イエレン議長をはじめとするFRBの高官が懸念する金融の不安定化とは、実態としての資産価格の上昇そのもの以上に、バブル的状況が波及し、拡大するメカニズムのことを指しているのではないだろうか。

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