地方版成長戦略で国の競争力を高める

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2014年02月03日

  • 岡村 公司

各地で地方版成長戦略の策定が進んでいる。国の成長戦略「日本再興戦略」では、地域に根ざした生の声を競争力強化に反映するため、地域ブロックごとに地方産業競争力協議会を設置することを求めている。2013年11月から計9ブロックで第1回協議会がそれぞれ開催され、各地の戦略策定に向けた検討が始まった。

協議会の委員には、各ブロック内の都道府県知事や市長などに加えて、地域経済の現場からの意見を取り入れるため、各地域を代表するような企業の経営者も招集されている。地域ごとの戦略産業を特定し、地域に眠る資源を掘り起こし、地域に必要な産業人材を育成していくための戦略を策定する。

2014年に入ってから開催されている第2回協議会で戦略の骨子を示し、3月の第3回で各地域の成長戦略を採択する予定のブロックが多い。2014年度以降は、半年に1回程度、定期的にフォローアップを行い、必要に応じて戦略を改定していく。国の緊急構造改革期間中(2017年度まで)は、地方ブロックごとに戦略推進を継続する計画になっている。

1月24日に国の成長戦略の実行計画が閣議決定された。2013年12月に成立した産業競争力強化法に盛り込んだ規制改革や減税策などを実行に移し、雇用・人材、農業、医療・介護といった構造改革に取り組んでいく方針である。

地方版の成長戦略は、各地方から国へのボトムアップ的な産業政策といえる。国が戦略策定に関する大まかな枠組みやスケジュールなどを提示しているが、各地方産業競争力協議会が主体的に具体的な内容を取り決めることが求められている。地方から国に対して、各地の成長戦略を実行するための制度改正、予算措置、減税策などに関する要望が示されることになっている。

北海道を除いて、各ブロックは複数の都府県で構成されているため、成長戦略に統一感のある方向性を示せるかどうかが重要になる。例えば、A県で収穫される農産物や海産物をB県で食品や飲料に加工して全国に販売するとか、C県の文化的な名所・旧跡とD県のレジャー施設や商業地をセットにして海外からの旅行客を増やすというような組合せが考えられる。地域的な優位性を活かしながら、ブロック内での分担や連携が明示されることが望ましい。

総花的で政策の方向性が定まっていない場合は、戦略の推進力が分散し、その実効性が低くなる。達成すべき目標が具体的に明示され、各地方自治体だけでなく、地元企業の経営者や就労者などにも理解しやすく、メッセージ性が高い戦略を策定することが望まれる。

地方版の成長戦略は、国の成長戦略と歩調を合わせながらも、国全体の経済成長や雇用創出を各地域が先導する役割が期待される。特定される産業分野や重点施策に対して、限られた地域資源を有効に活用することが地域経済の発展を支えるとともに、国全体の競争力強化にも寄与すると考えられる。

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