世代を超えるビッグデータに憂う

2013年10月21日

2011年1月から2012年5月末までの1年5カ月間に、主な一般紙・一般誌(※1)に「ビッグデータ」が登場した回数は58件(※2)であったが、2013年は約10カ月間で613件(※3)と激増している。ビッグデータの一般的な定義(※4)は、大量の非構造化データ(※5)を指し、狭義には、大量(Volume)であるだけでなく、多様性(Variety)と頻度(※6)(Velocity)という3つの「V」を持つものである。代表的なものとして、SNSなどのソーシャルメディアの浸透によって生成・公開される、膨大な量のつぶやき、写真、位置情報などがある。また、通信機能のある腕時計型・めがね型のウェアラブルコンピュータや、センサーを活用した心電図・体温など生体情報を監視する機器、橋の異常を監視するシステム、車の走行情報、スマートメーターなど、M2M(Machine to Machine(※7))やIoT(Internet of Things(※8))による情報もある。2013年10月14日から18日に開催された「ITS(※9)世界会議」で、多様なセンサー情報を活用して人間が運転しない自動運転の車に試乗したという報道も散見された。また、ハンドルに付けたセンサーで運転手の生体情報をモニタリングして、必要時には車を止めたり、救急施設に連絡する研究もされているという(※10)。M2MやIoTが普及すれば、本人に関する情報ではあるものの「本人が生成を意識しない情報」がネットに流通することが常態化することになる。

ほかにも「本人が生成を意識しない情報」として、友人・知人の情報から類推される自分の情報がある。何らかの炎上騒ぎが起きると、SNS上では匿名であっても氏名、自宅住所、所属学校や勤務先など、「丸裸」にされることが少なくない。自宅の最寄り駅や自宅から見える風景、花火大会などの出来事、お気に入りのお店などの書き込みと、友だちのSNSに書かれた内容など複数の情報を総合して見つけられているのである。本人が出身校を書いていなくても、同級生が公開していれば、学校名がわかってしまうことがある(図表1)。

図表1 関与しない情報公開

これらは、本人と、ほぼ同時期に存在する「本人が生成を意識しない情報」とが結びついた結果、起こる。一方、異なる世代の情報が本人に結びついてしまう「本人が生成を意識しない情報」として、遺伝子情報がある。治療や予防医療のために遺伝子情報への期待は大きいが、例えばA氏の遺伝子情報は、A氏の祖先や子孫という血縁者にとって「生成を意識しない情報」となるため、A氏だけの判断で公開することを懸念する声がある。

こうした出来事から、暗い近未来が思い浮かんだ。SNSに公開されている微笑ましい写真や日記が、将来、公開したくない家族の情報を公開させてしまう原因になるのでないか、と(図表2)。自分の子供の好きなキャラクターや食べ物など、家族に関する情報や写真を公開しているSNSは多い。将来、子供自身がネットを使うようになったときに、誰も知らないだろうと思って、昔飼っていたペット名をパスワードなどに設定(※11)したとする。しかし実は、ネット上のどこかに存在していた親のSNSに書いてあるかもしれない。親自身が忘れるほど昔にネットに公開した家族旅行の写真が、事件の加害者や被害者が「こんな子供時代だった」ということを示すために、使われてしまうかもしれない。運転者の生体情報をモニタリングする例でも、将来は運転者が持病を登録して万一の場合に備えることができるようになるかもしれない。しかし、子供以降の世代が車の所有者になったときに、昔の血縁者が持病の情報を登録していたことなど意識することは少ないだろう。このような考え方は、ネガティブすぎるだろうか。

図表2 世代を超えた情報

(※1)日本経済新聞(朝刊、夕刊)、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、NHKニュース、日本テレビニュース、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンド、週刊エコノミストを検索対象とした。

(※2) 大和総研 ESGニュース 2012年6月8日 「2012年は『ビッグデータ』の分水嶺

(※3)日経テレコン21による検索結果。検索日は2013年10月15日、キーワードは「ビッグデータ」、期間は2013年1月1日~2013年10月15日。

(※4)世界中で確立した定義はない。

(※5) 従来、企業が管理・活用してきた顧客データ等を構造化データといい、非構造化データは画像や動画等の、従来のデータベースでは管理しにくいデータを指す。

(※6)Velocityの和訳は速さや速度。

(※7)機械同士の通信。

(※8) センサー利用などでパソコンやスマホ以外のモノもインターネット化すること。

(※9) ITSは、Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)のこと。

(※10)2013年10月14日 日本経済新聞など。

(※11)パスワードによる認証は限界にきていると指摘されており、将来は別の認証方法が普及している可能性はある。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

執筆者紹介

最新コラム