台風襲来の日

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2013年09月26日

  • 岡野 武志

かつて甚大な被害をもたらした洞爺丸台風(1954年)や狩野川台風(1958年)、伊勢湾台風(1959年)がこの日に襲来したことから、9月26日は「台風襲来の日」とも呼ばれている。台風は一年を通じて発生しており、最も早い時期の上陸は1956年の4月25日、最も遅い時期の上陸は1990年の11月30日が記録されている。しかし、9月の台風は、南海上から放物線を描くように日本付近を通過することがあり、強い勢力を持つものも少なくない(※1)。室戸台風(1934年)や枕崎台風(1945年)、第二室戸台風(1961年)など、名のある台風の多くは9月に襲来している。かつては、立春から二百十日や二百二十日も意識され、特に注意を要することが言い伝えられてきた。

ところが、近年の「災害をもたらした気象事例(※2)」をみると、台風だけでなく大雨や暴風なども、大きな被害をもたらすことが少なくない。気象庁は「平成24年7月九州北部豪雨」の際、「記録的な大雨に関する気象情報」を初めて発表し、「これまでに経験したことのないような大雨」という表現で警戒を呼びかけた(※3)。「記録的な大雨に関する気象情報」は、50年に1度程度の非常に稀な大雨の場合に発表されることになっているが、今年になって、西日本から北日本の広い範囲での大雨(7/22~8/1)や秋田県・岩手県を中心とする大雨(8/9~8/10)などでも、「これまでに経験したことのないような大雨」という表現が使われている。

思えばこの夏は、高知県四万十市で最高気温41.0℃が観測され、沖縄諸島近海で海面水温が31℃以上になったことが伝えられるなど、これまでに経験したことのないような現象が各地でみられた。関東地方などで相次いで竜巻が発生したことも記憶に新しい。気象庁に設置されている「異常気象分析検討会(※4)」は、この夏の日本の極端な天候について、9月2日に分析結果を公表している。日本海側を中心とする大雨や太平洋側の少雨、全国的な気温の上昇などについて、それぞれの要因が分析されており、平均気温の上昇傾向や猛暑日の増加傾向については、地球温暖化の影響が現れているとの見方が示されている。

気象庁は、これまでの警報の発表基準をはるかに超える現象に対し、「特別警報(※5)」を発表して、最大限の警戒を呼び掛ける運用を8月30日から開始している。しかし、これまでに経験したことのないような現象に対して、直前に警戒するだけで、生命や財産、インフラや産業などを守れるかと考えるとはなはだ心許ない気もする。9月16日に上陸した台風18号では、早くも京都、滋賀、福井の3府県に大雨特別警報が出されている。暴風雨や洪水、竜巻や山火事などの報道は、国内に限らず世界各地から連日のように伝えられてくる。極端な天候(現象)が、一時的・局地的な異常現象ではなく、地球全体に広がる一定の傾向であるとすれば、地球温暖化防止の取り組みには、時間的な猶予はそれほどないように思える。

(※1)「台風の統計資料」気象庁
(※2)
災害をもたらした気象事例(平成元年~本年)」気象庁
(※3)
コラム 記録的な大雨に関する情報の提供」(「平成24年度国土交通白書」第Ⅱ部第7章第2節)国土交通省
(※4)
異常気象分析検討会」気象庁
(※5)
特別警報について」気象庁

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