アジアのインフラ整備と金融資本市場の活性化

2013年8月6日

  • 金融調査部 兼 経済調査部 研究員 神尾 篤史

先行き、アジア経済は高い成長が続くと予想されている。IMFの見通し(※1)によれば、新興アジア経済(※2)は年平均+7.5%(2013年~2018年)と、世界経済全体(同期間:同+4.2%)よりも高い成長になると予想されている。このような高い経済成長を達成するために注目されるのは、電気、通信、交通、水道、衛生に関するインフラの整備である。例えば、道路や港湾等のインフラ整備が進めば、物流の効率化が期待される。物流の効率化は納期短縮、コスト削減等につながり、生産性が高まる可能性があろう。

ADBは2009年に公表した“Infrastructure for a seamless Asia”で、アジアが潜在成長力を発揮するために、2010年~2020年までの間にインフラ整備で必要な資金を約8兆米ドル(年間7,300億ドル)と推計した(推計対象はアジア30ヶ国(※3))。この内訳は新しい設備のために約5.4兆ドル(68%)、既存の設備の維持・更新のために約2.6兆ドル(32%)である。

 推計対象となったアジア30ヶ国の2012年の貯蓄額は5.4兆ドル(※4)であり、この水準の貯蓄額と同じ水準、もしくは上回る水準が毎年創出されることを考えれば、インフラ整備に必要な資金を十分に賄える。もっとも、この貯蓄額の7割程度が中国で創出されるものであり、資金は偏在している。必ずしも、全ての国に資金が行き渡るわけではない。この状況を解消するためには、資金余剰主体から資金不足主体へ資金を融通する仕組みを作ることである。各国、そして地域の金融資本市場の参加主体や取引額を増やして、市場を活性化・発展させることである。

日本としてできることは何か。7月25日に行われた「アジアの発展と日本の資本市場」というセミナーでの麻生副総理(財務大臣 兼 金融担当大臣)の講演では、日本のアジアへの貢献について、以下の4点を挙げていた。

①日本の貯蓄(15兆ドル)をアジアのリスクマネーとして利用
②日本市場をアジアの貯蓄を利用する場とする(日本市場をアジアの年金資金を運用する場とする)
③アジアの金融安定に貢献
④金融インフラ整備のためのTA(テクニカル・アシスタンス)の強化

上記の①と④はインフラ整備について、まさにアジア各国で必要な取組みであるといえ、日本経済にとってもプラスに作用すると思われる。このような取組みを継続することが必要である。アジアとの共生にいかに取り組むのか、日本の重要なテーマである。

(※1)IMF“World Economic Outlook Database April 2013”のデータ。
(※2)IMFによる区分で、中国、インド、東南アジア、太平洋島嶼国を含めた28ヶ国。
(※3)対象は中央アジア(7ヶ国)、東南アジア(8ヶ国)、南アジア(6ヶ国)、太平洋島嶼国(7ヶ国)、中国、モンゴルの30ヶ国。
(※4)IMF“World Economic Outlook Database April 2013”のデータより計算した数値。

 

 

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