"良い"期待インフレ率、"悪い"期待インフレ率

2013年7月30日

“良い”○○、“悪い”○○という対比をしばしば耳にする。例えば、長期金利については、“良い”長期金利の上昇、”悪い”長期金利の上昇という分類がなされることがある。前者は、実体経済の改善に伴う長期金利の上昇、後者は財政の信認が失われリスクプレミアムが拡大することに伴う長期金利の上昇である。

いま話題となっている「インフレ率」と「期待インフレ率」についても、“良い”○○、“悪い”○○の概念が当てはまるだろう。初めに「インフレ率」について説明すると需給ギャップの改善によるインフレ率の上昇は“良い”インフレ率の上昇、負の供給ショックを主たる要因とする場合は“悪い”インフレ率の上昇という具合に分類されているようである。

では、「期待インフレ率」についてはどうか。“良い”期待インフレ率の上昇とは、将来の景気回復期待に基づく期待インフレ率の上昇である。例えば、量的・質的金融緩和という大規模な金融緩和により人々が「この先景気が良くなるかも!」と思えば、期待インフレ率が上昇してもおかしくないだろう。

では、“悪い”期待インフレ率の上昇とは何か?これは中央銀行が金融引き締めを行うことができないという思惑が広がることに起因する。金融政策の基本的なテキストでは、中央銀行が政策金利を自由に動かすことができるという前提がある。しかし実際には、超過準備が積み上がっている状態下では、オペにより短期金融市場での資金需給に影響を与えることを通じて、短期金利を引き上げることができない。そこで、当座預金への付利を引き上げることで、短期金利を引き上げるという手段が考えられる。ただし、この場合、日本銀行が民間金融機関に支払う利払い費が増加し、日本銀行の経常利益を圧迫する。利払い費は、当座預金残高と付利の誘導水準に比例するため、量的・質的金融緩和が長引き当座預金が大量に積み上がった状況下では、将来的にインフレが発生しても適切な付利の引き上げを行うことができないかもしれない。このような思惑が広がってしまうと、期待インフレ率は上昇することが予想される。

ただし、厄介なのは、このような“悪い”期待インフレ率の上昇は、利上げが必要な時点になって初めて顕在化することである。“悪い”期待インフレ率の過度な上昇はバブルを生む原因となりうるだろう。

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