求む、ガッツのある日系中小企業inミャンマー?

2013年5月13日

TPP交渉参加のテーブルについた日本にとって、国内の中小企業支援や農業支援は重要な課題である。実は中国や韓国、ミャンマーなどでも事情はほとんど変わらない。中小という企業規模や農業という産業は経済構造における弱者と化してしまっているからだろう。とりわけ、ミャンマーでは重要政策になっている。農水産業には、国民の約6割が従事し、GDPの約3割を占める。民間企業数の9割が中小企業で、その4割以上が食品・飲料産業=農水産業&加工業。急激な開国の波の中で、貧富の差拡大を避けるためにも、この主要産業の強化を迫られている。

 農業は貿易の主軸でもある。豆類に関して、世界有数の輸出国であり、2013年5月、日緬間では45年ぶりに輸出が再開されたコメは、かつて世界最大の輸出国でもあった。現在は、日本や中国などに収穫した農水産物をシンプルな加工を施す程度で売る、もしくは、中国などはバイヤーが直接収穫した現品を買い付けにくる、などで、ミャンマー側が付加価値を大して乗せられていない状況だ。また、利用している農機具の性能の低さ故に効率的な大量生産を実現できていない。本来の強みを最大化させるためには、高付加価値化可能な品種の選定や、生産・加工コストの圧縮の設備投資、マーケティング戦略に精通した人材育成などが必要だろう。

 ミャンマー政府は、工業省傘下の中小企業振興中央局を中心に中小企業の支援政策の一環として、2012年12月から50億チャット(約5.6億円)の融資枠を設定。一般的な金融機関では金利13%、期間1年での融資になってしまうが、この政策では8.5%の優遇金利、期間3年に延長という特徴が受け、既に、2013年3月時点で40億チャットを貸し付けている。さらに、融資枠を300億チャットまで増額したいと財政歳入省の副大臣は発言している。中小企業法の制定中で、中小企業の定義を見直し、支援先の拡張も模索している。

しかし、中小企業が担保を保有していないという問題があったり、現在、ドイツ版JICAのGIZ(ドイツ国際協力公社)が中小企業の融資審査の技術協力をしているが、家族経営レベルの農家や中小企業が融資審査に必要な成長性・安定性などを実証できる財務諸表を正確に付けているか、定かではなかったりという状況である。結局、融資という手法を超えた“経営とは”という根本的なノウハウを伝授できる人材が必要であり、ミャンマー国内だけでは人手不足状態である。

 その中、外務省・JICAで素敵なお願いを発見した。「求む、ガッツのある中小企業!」日本の海外展開を模索している中小企業と、途上国のニーズをマッチングさせ、ODA資金で支援するプログラムの呼びかけである。視点を換えれば、日本の中小企業は、長期経営を実現しているケースも多く、経営判断などの決定ルートが簡素化されていて機動的とも捉えられる。資金調達のしにくささえクリアすれば、低コスト・小規模経営で蓄積されたノウハウは武器となる。外務省・JICAはミャンマー支援において日本サイドの主軸となっており、潤滑油として日本の中小企業が活躍することが大いに期待される。ミャンマーの中小企業にとっても、日本の中小企業がパートナーとなれば、“同じ視点”で事業を見渡せ、理解しやすいだろう。事実、経済産業省・中小企業庁の「中小企業官民合同ミッション」の一環で、2013年3月23日に開催された日緬の中小企業による商談会では見込み成約額が約9億円に達する成功を収めている。内容はインフラ関連業・製造業が中心であるが、一方で、タイの工業連盟では自国の中小企業向け水産加工拠点をミャンマーに整備する構想があるなど、ミャンマーの農水産業にも積極的に食い込む姿勢を見せている。日本もこれまでのODA支援の実績を活かしながら、かつ、進化系の支援を提供することで、ますます裾野は広げられるのではないか。ミャンマーと日本の中小企業・弱者的な産業を盛り上げる意味で一石二鳥ともいえる計画は、飛躍するだろうか?ぜひ、原動力となる日本の中小企業に積極的にかかわっていただきたいものである。

参考文献
独立行政法人 国際協力機構(JICA)「中小企業等海外展開支援事業への取り組み

外務省 国際協力局「ODAを活用した中小企業等の海外展開支援」(平成24年6月)

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