マクロの成長とミクロの成長

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2013年01月16日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

政府は2013年1月11日に緊急経済対策を閣議決定した。今回の経済対策の柱は、①復興・防災を中心に5兆円程度という大規模な公共事業行うこと、②日本銀行との連携を強化し、大胆な金融緩和を行っていくこと、③規制改革や租税措置等を通じて民間投資を喚起すること、の3点である。家計部門に関しては、「企業収益を向上させて、雇用や賃金を拡大につなげる」としており、新政権の産業・企業部門重視の姿勢が改めて明確になったと言えるだろう。

経済全体を活性化させ、経済成長をするためには産業・企業を活性化させることが必要なのは言うまでもない。しかし、企業にとって最善の行動は、必ずしも経済全体にとって最善の選択とはならない可能性がある点には留意が必要だろう。企業部門における目標は収益の最大化であるが、多くの企業にとって最大の関心は海外法人も含めた連結ベースの収益を増加させることであり、日本国内の収益を最大化することではない。一方、マクロ政策の最終目標は経済成長、すなわちGDPを増加させることであるが、GDPは概念的には国内単体収益に近い。

海外需要を取り込むことの重要性は、マクロ(日本経済)、ミクロ(企業)のどちらにとっても同じだが、連結収益を重視する企業にとってみれば、必ずしも国内での生産や収益を増やす必要はなく、むしろ人件費等のコストが安い地域での現地生産比率を高めるのが自然な考え方であろう。企業の海外進出が過度に進めば国内産業の空洞化につながり、空洞化によって国内市場が縮小すれば、企業収益にも悪影響を与えることになるわけだが、個別企業ベースでみれば、そうした悪影響を無視してでも積極的に海外に出て行くことのメリットのほうが大きいと考える企業も多いだろう。

新興国を中心とした海外には国内に比べて大規模な市場があるとともに、高い成長が期待できることから、日本企業の海外進出は一過性の現象ではなく、今後もトレンドとして続く可能性が高い。企業重視の経済成長を達成するためには、企業の国際競争力を高めるとともに、企業が国内に留まるインセンティブをいかに高めるかが重要である。

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橋本 政彦
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ロンドンリサーチセンター

シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦