円滑化法失効を控え注目される売掛債権の流動化

2012年10月22日

リーマン・ショック後、様々な中小企業金融支援策がとられている。例えば緊急保証(※1)や中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)の導入などが挙げられる。これらはあくまで急激な経済環境の悪化に伴い、一時的に中小企業の資金繰りを支えることを目的とした策であることから、円滑化法は2013年3月末に失効、2012年11月からセーフティネット保証(第5号)は対象業種が縮小される予定である。しかし、リーマン・ショックから4年以上過ぎた現在においても、経済環境は先行き不透明感が漂う。中小企業金融支援策が縮小していくことに対する懸念の声も強い。


このような環境下、改めて注目されているのが“売掛債権の流動化”である。企業間の取引においては、製品やサービスを提供してもその代金の支払いは数カ月後、というケースも多い。売上がいくら増えても手元の現金は増えない、そのような状況で借入の返済時期が到来してしまうと、いわゆる“黒字倒産”という最悪の事態にもなりかねない。


売掛債権の期日前に現金を手にできればこのような事態は回避できる(※2)。以前から関係当局は売掛債権の流動化を促進すべく、体制整備を進めてきたが(※3) 、これまで利用はあまり進んでこなかった。流動化手法の(1)証券化、(2)担保融資(※4) の実績をみていくと、2011年度に組成された“売掛金や商業手形を裏付資産とした証券化商品”は709億円(※5)、動産担保も含めたABL(Asset Based Lending)は年間の融資実行額で2,000億~3,000億円程度となっている(※6)。中小企業向け総貸出残高(2011年12月末時点で245.6兆円(※7))からするとごくわずかというのが現状である。普及が進まない背景としては、(金融機関側の)モニタリング体制等の未整備や、売掛債権に譲渡禁止特約が付されている場合に解除が困難であることなどが挙げられる。


時限的に手当てをしていた中小企業金融支援策を元に戻すにあたり、改めて“売掛債権の流動化”の重要性が認識されている。資本金1億円未満の企業が保有する売掛債権は全体で67兆円ほど存在し(2011年度末時点)(※8)、金額が大きい。これを活用すれば企業の運転資金が行き詰まることをある程度は防止する効果が期待できよう。


ただ、売掛債権の流動化はあくまで“将来回収する予定の代金を先取る”ことであり、借入や増資、社債発行などの資金調達とは性質が異なる。また、そもそも売上がなければ売掛債権は発生しない。売掛債権の流動化は一時的な資金不足には有効な手段であるが、企業の成長を促すための投資資金に関しては、やはり外部からの資金調達が不可欠であることは忘れてはならない。

(※1)その後景気対応緊急保証に引き継がれ、現在はセーフティネット保証第5号が代替の役割を果たしている。
(※2)なお、企業間信用に関しては手形割引で現金化が可能であるが、手形は事務手続きが煩雑であるため、近年利用は減少傾向にある。手形を発行せず、売掛金のままにしていることが多い。
(※3)2001年の売掛債権担保融資保証制度の創設(現在は対象が拡充され“流動資産担保融資制度”に名称変更している)や2005年の動産・債権譲渡登記制度の整備など。
(※4)この他にファクタリングという手法があるが、統計などが整備されていないため本稿では割愛する。
(※5) 日本証券業協会・一般社団法人全国銀行協会「証券化市場の動向調査~2011年度の発行動向~」より。
(※6)中小企業庁 中小企業政策審議会「“ちいさな企業”未来部会 第三回 法制検討ワーキンググループ」資料より。
(※7)中小企業庁「2012年版中小企業白書」より。
(※8)財務省「法人企業統計」より。

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