リーマン・ショック4年目の現実

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2012年10月18日

  • 木村 浩一
リーマン・ショック後(2008年9月)、4年が経過したが、日、米、欧ともに巨額の財政赤字に苦しんでいる中で、ヨーロッパの苦境が際立っている。


ヨーロッパでは、ギリシャ、ポルトガル、スペインなどが、財政赤字の他、銀行の不良債権問題、経常収支の赤字という複合要因により、経済危機に陥っている。財政危機と銀行危機は連動し、資本不足の銀行に公的資本を注入すれば国家財政は悪化し、財政が悪化すれば国債を大量に保有する銀行の経営不安に直結する。財政危機と銀行危機を解決するには、銀行に公的資本を注入するとともに財政緊縮を行うという隘路を通るような政策を実施していかなければならない。


一方、日本とアメリカは、財政は悪化しているものの、日本とアメリカの金融機関は相対的に安全性を保っている。日本は、小泉政権時に主要行の不良債権比率を半減させるという金融再生プログラムで大鉈を振るい、アメリカは、リーマン・ショック後直ちに(2008年10月、11月、2009年1月)、主要行に公的資本を注入し、金融不安を解消した。日本とアメリカは、リーマン・ショック後の対応において、金融不安を起こさずに民間債務や不況克服のための債務を中央政府に集約することに成功したことが、ソブリン・リスクの拡大とともに危機を深めたヨーロッパとの違いとなっている。財政危機と金融危機を連動させないためには、金融不安を起こさせないための銀行の資本力強化、金融規制の強化が重要だ。


また、地方自治権が強く中央政府のコントロールが効きにくい連邦制の国などの地方財政にも注意が必要だろう。地方自治体の財務の悪化は、地方自治体の債務の中央政府への肩代わりや、地方債を大量保有する金融機関への悪影響を起こし、ソブリン・リスクと金融リスクを再起動させる。既に顕在化しているスペインの他、ドイツ、アメリカの地方財政の動きには注意が必要だろう。

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