BCP(事業継続計画)の再確認

2012年10月1日

  • コンサルティング・ソリューション第一部 大村岳雄
今年も自然災害が猛威をふるっている。7月には熊本市が、8月には宇治市が豪雨水害にみまわれた。9月には横須賀市で豪雨から土砂崩れが発生し脱線事故となった。企業経営者にとっても自然災害は看過できない事象であり、このような災害や事故が発生するたびに、事業継続計画(BCP)の重要性が再認識されている。

企業のBCPへの取り組みの現状はどうであろうか。内閣府の調査(平成23年度)によると、BCPを「策定済み」もしくは「策定中」という企業は、大企業で7割強、中堅企業では3割5分となっている。これは前回調査(平成21年度)の大企業が6割、中堅企業が3割に比べ増加しておりBCP策定に意識が高まったことが伺える。

図表. 企業規模別のBCP策定状況
図表. 企業規模別のBCP策定状況
(出所)内閣府(防災担当)、平成24年3月

しかし、昨年の東日本大震災では原発事故と津波という災害が重なり大きな被害をもたらした。特に、計画停電が実施されたことも業務には大きな影響を与えた。先の調査がこれを裏付けている。東日本大震災で「重要な業務が停止したかどうか」については、全体の35%が停止したと回答しており、特に製造業・小売業では40%を超えている。重要な業務が停止した理由として、「停電」「交通機関の停止・道路の通行不能」「電話・インターネットの利用不能」といったインフラ・ライフラインの停止・利用不能を挙げている企業が多かった。

ではBCPは有効に機能したのであろうか。いくつかの業界では企業の垣根を越えて復旧に結束をした動きはみられたが、発災当時は「電話がつながりにくい」、「安否確認に時間を要した」、「社員の帰宅をどうすればよいか」、「被災地との確認に手間取る」など苦労した企業は少なくなかった。

BCP策定の全体的な流れは、「推進体制の構築」「基本方針の策定」「重要業務と目標復旧時間の決定」「想定シナリオの作成」「有事のための組織体制と対応策の検討」「BCPの文書化」である。経済産業省の「事業継続策定ガイドライン」(05年3月)や内閣府の中央防災会議「事業継続ガイドライン第一版」(05年8月)などを参考に企業ではBCPを策定している。しかし、BCPは策定することが目的ではなく、それが有効に活用されるために社内で広く共有され、訓練が実施され、適宜メンテナンスされることが重要である。

BCPの目的は、かつての防災計画の目的が人命と財産の保全であるのに対し、従業員だけでなく取引先、顧客、株主といったステークホルダーに対し不利益をもたらさないようにすることである。そしてBCPを持つことのメリットは、災害や事故の発生時にその影響を減じるというだけでなく、サプライチェーンの一員としての役割を果たし、取引先からの信頼を高めることにある。

事業の継続性確保は、企業経営にとって重要な課題の一つである。弊社としてもBCP推進のための支援をしていきたい。

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